Scribble at 2008-01-17 00:09:40 Last modified: 2022-12-28 15:30:05
さきごろ /.J で紹介されていたレポートに もあったように、大企業の約7割はまだテーブル主体でレイアウトを組んでいます。これは、企業というよりもスタイルシートでのレイアウトに躊躇する制作会 社や代理店が多いということでもあり、その最も大きな理由としては、恐らく相変わらずの互換性(ブラウザどうし、また同ブラウザのバージョンどうし)が挙 げられるでしょう。もちろん対応すること自体は可能ですが、Netscape Navigator 4.7.x と Opera 9 Beta で全く同じ見栄えを実現しようとすれば、レイアウトにスタイルシートを導入することが、他の修飾的なプロパティの使用を諦めることにつながるというジレン マを引き起こすでしょう。また、一部の有能な方から見れば信じられないことかもしれませんが、ざっと他の制作会社のサイトを見たり、あるいは実際に制作会 社で働いてきた経験から言うと、日本で何らかの制作会社に所属している「ウェブデザイナー」のうち、フルでスタイルシートのレイアウトが組める人は多くて 3 割くらいだと見ています。そして、この数はもちろん上記のレポートの結果と関係があります。実際のところ、フルでスタイルシートのレイアウトが組めるウェブデザイナーは、実はそれほどいないと思っています。その感覚だけでも「3割以下しか いない」と推定して構わないのですが、もう少し考えてみましょう。上記の記事で挙げられていたのは、確かに一部上場の大企業ですが、そこのサイトを制作し ているスタッフは、たとえ制作会社の名前が大きくてもそれに見合ったスキルがあるとは限りません。ふつう、こうした大企業のサイト制作を請け負ってくるの は、サイバーエージェントや博報堂といった代理店さんです。そこが、予算やスキルを考慮して制作会社に依頼します。規模が大きくなると、代理店から実制作 を請け負った制作会社が、また他の制作会社とかフリーランサーに実制作を依頼することもあります。そうすると、実制作するスタッフがスタイルシートのレイ アウトに対応してコーディングできなければなりません。また、実制作のスタッフから帰ってきた(外注の場合は納品された)ファイルを開いて、代理店へ納品 するまでに少なくとも内校と最終校の計2回はチェックする必要があるでしょう。では、誰が? 代理店から受けた会社にスタイルシートを理解できる人間がいなければ、およそ内校などできる筈がありません。したがって、一人でもスタイルシートを理解し ていないスタッフがいれば、そのレベルに合わせてレギュレーションを立てなければならないでしょう。そして、特に大阪の制作会社を色々と見ていて思うので すが、スタイルでレイアウトを組める人の方が多い制作会社というのは、実は数えるほどしかないと言えます。スタイルを組めるスタッフがどれだけいても、そのスタッフだけでは仕事を処理しきれない場合は、レギュレーションをテーブルレイアウトに変更(敢え て「落とす」とは言いません)しなくてはなりません。したがって、一つの制作会社としてはテーブルレイアウトしか対応できない「見做し判定」を食らっても 仕方がありません。もっと案件の規模が小さくなって、スタイルシートを理解している一部のコーダーとデザイナーの組み合わせだけで処理できるなら、フルで スタイルシートのレイアウトにも対応できると言うでしょう。しかし、見做し判定としては「できないも同然」となります。上記のレポートにでてきた数字も、 大企業のサイトだけを分析して国内の動向をそのまま一直線に語っているものではなく、「見做し判定」をしているにすぎません。僕がここで述べている推定 も、同じく見做し判定です。ここからマーケティング屋さんのように「先進的な企業はみんなスタイルでレイアウトを組んでいますっ!」などと言っておいた方がよいのかもしれませ んが、残念ながら僕はウェブデザイン業界はぜんぜん淘汰が進んでいないと思っているので、スキルのない人にはそのままいてもらう方が助かるという邪悪な戦 略を採りたい(笑。特に、DTP 業界からウェブ制作に参入してくる会社をどうやって早い段階で淘汰するかが鍵になるでしょう。断言しますが、DTP しか知らない人はそのままのスキルでウェブデザインなどできません。というか、してほしくないのだけれど、「コンピューターでデザインできます」という大 づかみな感覚で参入してくる会社は後を絶たないため、スタイルシートのスキルだけを問題にすると、再び IA やユーザビリティなどが置き去りにされかねないという危惧があります。で、ふだんからスタイルシートを使っている方はおおよそ分かっていることでしょうが、現行の CSS 2.1 をフルで使う機会などめったにありません。特に音声出力関係のプロパティや印刷出力用のプロパティは、仕事で使ったことのない人が大半だと思います。そし てこれもまたおおよそお分かりかもしれませんが、フルで使ったところでスタイルシートの装飾プロパティは一枚の画像や FLASH にはかないません。それに、絶対位置でも使わない限りレイアウトにそれほど自由度はなく、海外のスタイルシート系のショーケース・サイトを見ても分かるよ うに、オリジナリティの大半はスタイルの使い方ではなく貼り付けている画像もしくはスタイルを使うための DHTML の組み方だったりします。スタイルシートの有効性は、おおざっぱに言えば (X)HTML でマークアップされたデータの言語構造において syntax と pragmatics の分別にあるのだから、分別した後の pragmatics 的なレベルでボーダーを何ピクセルにするかとか、あるいはフォントサイズを固定すべきかどうかといった話題は、ユーザビリティの観点から色々と考えられる ことは多いけれど、スタイルシートの本質的な有効性は既に満たしているという点から言えば、まさしく枝葉末節のどうでもいい話でしかありません。また、このことから分かるように、スタイルシートをスキルとして修得するということは、まさしく pragmatic なものを syntactical なものから切り離したときに、本体をきちんと理解してマークアップできるかどうかにかかってきます。それゆえ、(X)HTML を理解していない人が「これからはスタイルシートのレイアウトです」などと口にするのは笑止もいいところで、それこそ <font> タグをべたべた貼り付ける感覚で「デザイン」をやっていた前時代的なオペレーターの方々と同じ次元でしかありません。ということで、いろいろな意味でスタ イルシートを使ったデザインというものは、まだまだ過渡期なのかもなぁと考えさせられます。