Scribble at 2020-10-02 08:10:38 Last modified: unmodified

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Explains and exemplifies the application of complex-systems theory to understanding real and pressing societal problems, such as financial crises, pandemics, war and terrorism, human mobility and migration.

Why Society is a Complex Matter: Meeting Twenty-first Century Challenges with a New Kind of Science

イギリスの science writer であるフィリップ・ボールが2012年に Springer から出版した本だ。興味深いタイトルで2,000円程度と安かったので取り寄せてみると、A4版の大型書籍だった。とはいえ、60ページほどの本だから手軽に扱える。内容は、交通渋滞、割れ窓理論、金融経済、都市計画、意思決定など、多くの人々による社会現象を ICT によって解析し解決することを目指すという主旨で、色々なケース・スタディが紹介されている。但し、学術研究書というよりもサーベイを集めたものと言うべきで、複雑系を利用している割には全く数理モデルの式が出てこない。また、タイトルは明らかに本書よりも10年くらい前に出版されたスティーヴン・ウォルフラムの著書を連想させるものの、スティーヴンの著作("A New Kind of Scinece")には全く触れていないので、関係があるのか、それとも単なる修辞的な言い回しが偶然に一致しているだけなのかは分からない(「新しい科学」という表現はスティーヴンが商標を登録しているわけでも何でもない)。

このフィリップ・ボールさんについて当人のサイトや Wikipedia を読むと、science writer ではあるが Nature の編集者でもあるし、学術論文を定期的に発表しているアクティブな研究者でもある。このレベルの科学ライターは欧米には色々な分野で一定の人数がいるのだけれど、日本には残念ながら皆無と言える。いちばん近いのは文芸賞を受けた「独立研究者」を名乗る数学エッセイストの方とか、愚にもつかない生命論の俗書をあれこれと焼き直しながら出版している人物くらいのものだろう。あとは元ゲーム作家の素人思想家とか、その手の物書きは都内に蛆虫と同じくらいいるわけだが(これはショーペンハウエルの表現を借用しているだけであり、僕だけがこういう辛辣な表現を好んで使うわけではない)、ライターとしても学者としてもレベルが低すぎて、ただの器用貧乏だ。

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