Scribble at 2023-08-10 16:53:03 Last modified: unmodified
Google Maps や Yahoo! マップがスマートフォンで使われ始めた頃に、はやくも大阪市内の空堀あたりにあった地図制作会社が倒産したのを覚えている。地図の制作は時間もコストもかかる割に、そうホイホイと売れるものでもない。それが、常に最新版の内容で使える地図が無料で使えるなんてサービスがスマートフォンで使えるようになったのだから、相当な企業努力が必要になったはずである。上記の記事は、もちろん教科書の会社であって地図の会社ではないものの、地図にプロットしていく情報の調査や検査にかかるコストという点では似たようなものだろう。そして、そこをバイトやクラウド・ワーカーなんかで削ろうとすると、こういう結果になるわけである。今後はバイトやクラウド・ワーカーなんかよりも博識な AI を活用するとは思うが、それでも安易に信頼してはいけないのは当然であるから、どのみち校正のコストは必要だ。
僕の父親は西淀川の印刷会社で製版部長を担当していたため、校正の厳しさやコストについては一定の知識や経験や技能があり、もちろんワープロのオペレータをやっていた僕も納品物についてはタイプ・ミスのチェックという点で多くの注意を受けた。そのため、当社のサービスでもランディング・ページの宣伝文句が思いっきりタイプ・ミスしている事例などを見つけてきたし、それなりにエディトリアル・ライティングの素養はもっていると思っている。
東京書籍がバイトや素人に地図の制作(入力、編集、校正)を丸投げしていたのかどうか、あるいは社員がやっていたとしてもブラックな就労状況であったかどうかは分からないが、一冊の地図帳で1,200箇所の間違いというのは、これでも雑誌編集者だったこともある人間の感覚から言えば、度を超えている。そもそも、地図帳を制作して他人に売りつけようなんて会社や人間が、最初からデタラメな方針や体制で地図を編纂するということはない。しかも、東京書籍は日本の中等学校で採用される教科書の会社なので、一度に膨大な数をさばくことになる。遊び半分で参画できるようなものでないことは、十分に承知の上であろう。それでも、これだけの誤植や編纂ミスが生じるというのは、何かバカをバイトとして集めてきたとかいった問題ではなく、もっと致命的なところに問題があったのではないかと思われる。実際、昨年から使い始めてミスが続々と指摘されてから、わずか1年で修正した教科書を再配布しているというのだから、たかだか1年で修正できる程度のミスを2020年の検定に合格するまで全く気づかなかったということなのだから、これはそもそも教科書の編纂工程において校正をしていないのではないかと疑われてもしょうがない。