Scribble at 2026-05-30 09:09:34 Last modified: 2026-05-30 09:11:37
旧マシンには Waterfox のクラッシック版を入れてありこれは NAS に保存してあるデータを閲覧するために使っている。Firefox 用の拡張機能であった Scrapbook というアドオンで10年以上にわたって大量のウェブ・ページを保存してきたからだ。例の、「Springer 祭り」でダウンロードした大量の哲学論文も、このアドオンを使っていたのである。
もっとも、これでダウンロードした論文をどれだけ読んできたのかと問われても、せいぜい数本がいいところだった。当たり前のことだが、必要もなしに理髪店で『週刊新潮』のページを開くように ERKENNTNIS の(しかも初期は大半がドイツ語の)論文を読むなんてわけにはいかないわけである。そういう意味では、暇潰し同然の時間さえあれば、最近なら生成 AI に概略を教えてもらえるのだから、これは非常に助かる。実際、既に当サイトでたまに論文をご紹介している落書きでは、1本の論文を Gemini に解説してもらうのが30秒ていどだから、研究のソースとして使うなら更に丁寧に読む必要はあるけれど、簡単なサーベイとしてどのような論文なり話題が展開されているかという概略を得るだけなら、その生産性は生成 AI によって劇的に向上したのは間違いない。やろうと思えば、更に Gemini に論文を1段落ずつ訳してもらうにしても、実際に僕が訳文を1段落ずつ読むのと同じ程度の所要時間で訳してくれるから、1本の論文を1時間以内には通読できることとなる。単純に言えば1年で300本以上の論文に目を通せるのだから、大学院生とまではいかないまでも、アメリカの学部生レベルの分量でソースを扱えることになる。
もちろん誤訳はあるにしても、自分でドイツ語を勉強して読むときの誤解や未熟な理解のリスクに比べたらどうなのかという気がする。僕が生成 AI の品質についてあれこれと論評しているのは、当然だが僕が評価したり判定するだけの資質や知識をもっている話題や分野についての是非を判断できるという自信があるからだ。明らかに知識や技術や経験が不足していると自分で分かっていることについては、或る程度の間違いがあろうと、生成 AI に限らず誰かの成果を利用できるだけでも良いと割り切る必要があろう。実際、自分が知らないか未熟なせいで手を付けていない文章(端的に言えば知らない外国語の本や論文)の概略でも理解できるのだ。仮に全く意味が正反対になる誤訳が何か所か含まれるとしても、前後の脈絡で辻褄が合わないことに気づかないような見識や学識の人間が、論文を読もうとすること自体が不見識であろう。
で、ここでの話題はそういうことではなかった。いままで展開してきた話と比べれば些末のようにも思えるが、旧マシンでは Waterfox を使っているので、ついでに Firefox も使っているのだが、とにかくイライラさせられることが多い。理由は、この頻繁なアップデートだ。だいたいにおいて、ブラウザを立ち上げるときはウェブサイトにアクセスする目的があって起動するのであるから、そのサイトを即座に表示できることが望ましい。それこそ、昔から何秒ルールなどと言われてきた。だが、この Firefox は毎週のようにアップデートしているらしく、とにかく起動するたびにアップデートの処理が挟まってブラウザがなかなか起動しないのだ。ひところアプリケーションのベンダーがこぞって「ベータ戦略」だの「ローンチ・ファースト戦略」だのと言いつつ、競合に先んじてリリースすることが有利であるというわけで、いたずらにアプリケーションのアップデートを頻繁に行うようになり、従来であればメジャー・アップデートというよりも "nightly build"(こっそり夜中にリリースする、マイナー・アップデート版)であったものを堂々と正規のアップデートとして大宣伝するようになった。そして、その開発工程を "CI" として最新の開発プロセスであるかのように、色々な「技術的チンドン屋」と言ってもいい有名なプログラマやベンダーの技術部長などに本やら記事を書かせていたわけである。
だが、われわれのように半世紀近くもプログラミングに携わっている人間から見れば、こういうことは全てが自社ビジネスや製品の「販促」にすぎない。計算機科学としても、工学としても、ソフトウェア・エンジニアリングとしても、どういう分野から眺めてみても、こんなことに特筆するような新規性はないし、他の開発プロセスなりソース・コードの運用手法と比べて優越した利点などもないのである。要するに、これらはすべて(悪い意味での)マーケティングにすぎない。したがって、たかだかマイナー・アップデートにすぎない Firefox の更新を毎週のように繰り返すのは、ブラウザを利用するという行為も含めた UX の劣化や悪化でしかない。逆に言えば、本来ならセキュリティ・アップデートだけでよいはずの自動更新をユーザに押し付けているのだから、そんなに脆弱性が毎週のように出てくるのかという意味で、逆に Firefox の安定した開発体制に安心するというよりも、Firefox の開発チームはセキュリティ・ホールやバグを作り込むことが仕事ではないのかと思うほど不安を感じてしまう人もいると思う。もちろん、問題がないフリをするのは良くないが、Firefox の更新はあまりにも些末すぎる。