Scribble at 2021-04-09 09:33:59 Last modified: 2021-04-09 09:36:49
自宅で STM(scanning tunnel microscope:走査型トンネル顕微鏡)を製作するというのも、これまた Hacker News のコメントにあるとおり mind-blowing なことだ。この手の変な、これについてだけ言えば面白い、しかしもちろん目的によっては全く同じ知能を使って自宅で自動小銃や爆弾を作る奴もいるわけで、手放しでこの手の「ホビー」を称賛するのは感心しないわけだが、しかし結局は誰が何を作ろうと国家や他人が押し止めることはできないので、基本的には眺めつつこういう(多くの「善良な」人にとっては興醒めな指摘を加えながら)成果を紹介するしかないのだろう。
よって、自宅で何を作ってもいいなどと言うつもりは毛頭ないわけだが、確かにこういうものを実際に作ってしまう人がアメリカに(これも伝統的な independency という精神性ゆえだろうか)多く、上記のサイトで他のページを見ると分かることだが、単に部品を揃えて作ってるだけではなく、それを支える学術的な成果もきちんと出している場合も多い。これに対して東アジアの辺境国家で東大の修士を出たていどの素人が「理系」などと自称して作っているものと言えば、せいぜい出来合いの Raspberry Pi に部品をはんだ付けして盗撮カメラを作り、女子校に設置することくらいのものだろう。もちろん、大学や企業で専任として他人の金で STM を製作している人はたくさんいる。そんなの当たり前だし、プロパーならやって当たり前だ。
この、途方も無い格差は知性の差と言うよりも、やはりなんのためにこういうことに興味をもち、そして自分はこれをどうしたいのかという思考の習慣があるかどうかという、substantial に philosophy をしているかどうかの差に他ならず(要するにアメリカの「プラグマティズム」なんて、それほど複雑で高尚な話ではなく、学んだことを実際に自分でやってみて成果を測るというだけのことなのだ)、他人が書いた哲学用語集や勉強がどうのこうのとデタラメな話を撒き散らしている田舎教員の本を読むていどで「哲学」を学んだと簡単に騙されるような手合ばかりが育つ状況では、なかなか経済としても学術としても追いつくどころかフォロー・アップも困難な時代になってきているのだろう。