Scribble at 2000-08-07 00:00:00 Last modified: 2022-09-23 11:58:21

息抜きにやってる裏(InterfaceWorkshop)の方しか更新する気力がない。裏はまあ幸か不幸かネット上でこちらよりも多くの人に認知されつつあるので、これは自然なことです。さて最近はここでバイトの話をよく書くわけですが、10年を越えていろいろなバイトをやってくると幾つか書けることがあります。まず会社がよく勘違いするのは、「アルバイトの時給は、その人が全力でやれるだけの仕事に対する賃金だ」というものです。これはあからさまに間違っている。まず第一に、バイトが全力で仕事をすると考えているのが勘違いのもとなのだ。おおむね二十代の連中がアルバイトをする動機は、学生なら小遣い稼ぎだしフリーターや就職浪人なら生活費の工面でしょう。誰もその仕事を是非やりたいと思ってはおらず、しなきゃいけないと思って an や FromA を見るわけです。したがって最初からきつい仕事を選ぶわけはないが、そこはそれ、予定している金額を稼ぎたいと思えば時給との相談で無理をしてきつい仕事を選ばざるをえない。それでもできれば楽はしたいよね。だからきついところへ行ってもどうにかして楽をしようとするし、慣れてくれば適当に手を抜いても一通りの仕事ができるようになると分かる。楽ができると分かった、あるいは楽をしても一定の仕事量がこなせるようになったとして、バイトがその余裕をさらに仕事の方へ向けると会社が考えるのは馬鹿げています。そのよい証拠は、例えば派遣業者と契約して工場などへ出向く場合に、仕事の量や熟練度などに応じてバイトはランクづけされています。んでもってランクに見合った時給をもらえるわけですね。だって同じ額の時給しか出ないのに全力で他のバイトよりも仕事をするなんて人は、もともとその仕事が好きな人か、「仕事を懸命にしてる僕ってカッコイイ」とか自分を2~3mくらい後ろからいつも見てナルってる奴か、あるいは真面目というか愚直というか・・・馬鹿な人とは言いたくない気もするがやはり幾らか血の巡りが悪い人(数年前にわたくしはこういう人を「リゲイン君」と勝手に呼んでいた)でしょう。実例で言うと、わたくしはここ3年ほど秋頃から年末にかけて、大阪市の会社でアルバイトをしていました。ローソンとかのおにぎりやサンドウィッチを包んでる袋を製造していたわけですが、入り立てのバイトは二人一組で一台の機械を回します。で社員さんから聞いた話では、1ヶ月くらいで仕事に慣れない場合は考える(つまり解雇するかどうか決める)ということでした。入り立てのバイトは時給が900円なのですが、これは独りで機械を回せるという期待のもとに最初から(試用期間という名目で安い時給にしないで)払っているわけです。秋から年末という短い期間の仕事ですから、早く慣れてくれないと困るのですね。ここでわたくしは機械を(入り立てのバイトどころか一部の社員ですらこなせないほどのスピード設定にして)独りで回すだけでなく、材料の入れ換えや機械のメンテナンスをこなし、隣で仕事をしている他のバイトたちをフォローするとか、果ては先に帰宅した社員の代わりまでやっていたわけです。ということで自然なことだと思いますが、わたくしの時給には「能力給」という名目で 1.25 倍がかけられていました(18時~0時の仕事なので、22時以降は更に 1.25 倍がかけられる。ときどき、「夜10時以降は時給を50円アップします」とか偉そうに言ってる会社がありますけれども、1.25 倍以上になっていなかったら幾ら偉そうに言っていても違法です。きちんと交渉しましょう。ニュー○○パンは更に「11時以降」と言っていたぞ)。・・・これだけの仕事をこなして時給が他のバイトと同じだったら、どう考えてもおかしいでしょう。社員なら昇進とかボーナス査定がありますけれども、バイトは時給が全てです。時給の話はまだ続く。バイト先を決めるときに注意しなければいけないのは、「実質の時給」が違うことも多いということです。勤め出すと予想できなかった(わざわざ会社が面接の時に言わなかったりすることもある)出費があったりしますから、実質の時給を早く見積もってそのまま勤めるかどうかを決めるべきです。(ちなみに殆どの会社は2~3日の出勤だと給料をくれませんから、すぐに辞めるときはこちらからわざわざ電話を入れたり退社願を書いたりする必要はありません。求人雑誌では辞めるときの心得みたいなことを書いていますが、辞めた会社とあなたが将来に何らかの利害関係をもつ確率は、ふつうはきわめて低いので、悪印象を与えても大した損にはならないのです。そして、たま~に給料を出す会社もありますが、そういうところは節税とか交付金とか何らかの理由があってともかく出さなきゃいけないわけですから、放っておいても会社の方から連絡してきます。こう書くと確かに勤め人は「なめてんのか」と思うでしょう。しかし会社に連絡させるのがなめてるなら、少しでも働いた人間に給料を払わないのだってなめてるでしょう。激短のバイトと同じだと思えば払える筈です。)さてここでも実例。いま勤めている製作所ですが、わたくしの担当は鉄の棒に機械で孔を開けるという単純なものです。しかし孔を開けるときに舞う鉄粉を長時間にわたって吸い込んでいると、まず眼や喉が痛くなり咳き込んできます。誰でも体験するでしょうしすぐに分かることでしょうが、これは体力の問題ではなく、すぐに手を打たないと長続きしないのは目に見えています(そこを会社が分かってるかどうかは知りませんが)。で、いまのところは母親が勤め先の病院からかっぱらってきた医療用のマスクで凌いでいる。ふつうはタオルをデモのときみたいに巻くくらいでしょうね。それから、機械で孔を開けると出来上がった商品は絶対に素手で触れないほど摩擦で熱くなりますから、軍手が必要です(これは会社から支給される)。しかし軍手だと鉄粉やそれについた油を通すので、中の手が洗剤で落ちないほど真っ黒になります。そこで、更に炊事用の手袋を軍手の下につける(実は軍手一枚だと、熱くなった商品を5秒以上持っていたら火傷することがあるのだ)。ともかく手や体中が汚れるので、タオルは欠かせませんね。でも、ふつうの力仕事だとタオルは洗濯すればまた使えますが、ここでは使い回しができないくらい汚れます(CF みたく簡単に落ちるのは食用の油です)。当然ながら、シャツや作業服も油は落ちません。作業服は落ちなくてもいいでしょうが、タオルやシャツは買い換えなければいけませんね。どれくらいの頻度かと言うと、一週間にそれぞれ2枚ずつです。そしてマスクをしていても喉に入りますから、休憩のたびに何かを飲まないといけません。暑苦しくて飲んでいるわけではない。これを自動販売機で数本ずつ買うので、これもバイトの経費と考えていいでしょう。そして、会社によって待遇は違いますが、うちでは弁当代が一食あたり390円かかります。夜間のバイトだと、夜食を出してくれるところが多いのは助かりますね。居酒屋の酔虎伝でバイトをしていたときは、社員とバイトにわざわざ日替わりのメニューが用意されていました。これは一番いい部類の例ですが、勤める時間帯や長さによって出ないこともあるわけで、これは仕方ありません)。それから、バイト先によってはご丁寧に給料から所得税を1割引いてくれるところもあります(年間を合計して課税対象となる額まで稼いでいなくても、ふつうは戻ってこない)。こういった経費を引いていくと、例えば時給が1,000円のバイトでも実質的に800円くらいとなってしまうことがあります。ですから、面接などに行ったときはどういう仕事をどんな環境でしているか、一度は見るのがいいでしょう(「意欲がある」と好印象を持たれて採用されやすくなるというメリットも多少はあります。但し面接が詰まっていたりすると逆に迷惑ですから、状況判断を要します)。見て分からない場合は面接の時に質問するのがいいわけですが、「予想しなかった」出費なら面接のときに予想できるわけがないので(笑、職場環境について事前に質問を用意する方が健全です。入った後でベテランのバイトに聞くのも手ですが、そもそもベテランのバイトがいなくて数ヶ月おきに入れ替わってしまうようなところだと分からないからです(それはそれで職場環境や待遇が悪いという証拠になりうるわけですが)。基本的に、職場環境を社員に質問するのはよい戦術ではありません。自分の職場が働きにくいと言う社員はまずいませんし、社員にしつこく尋ねていると「細かいことにうるさい奴」という印象を持たれてしまいます(ので、面接でも待遇や職場環境の質問はあまりたくさんするべきではない)。まだある。バイトに行き始めてから誰もが気にするのは、入ってからはじめの給料が出るまでは交通費を用意しなきゃいけないという点でしょう。分かっているつもりでも見過ごしてしまうわけですが、あらゆる経費は後払いなのです。手持ちに2,000円しか持っていない人が、一月5,000円の定期代がかかる会社へバイトに行くことはできません。したがって、自転車や徒歩で通勤する範囲にバイト先を探すことが多いのは当たり前の話です。だって、すぐにやめるかもしれないのに定期なんか買ってられないしね。切符で行くにしても、「先に使った金を給料で補填してる」という感覚だと、なんか金を稼いだ気分じゃないし。この交通費でわたくしがいつも困るのは、わたくしはこれまで勤めた多くのバイト先に自転車で通勤していたわけですが、幾つかの会社は自転車のタイヤとかチューブの購入費を「交通費」として認めてくれないということでした。しかし逆に、自転車で来ていても自宅近くの駅から会社までの定期代を見積もって出してくれる会社だってあったわけです。この点は会社によってまちまちですから、ロードレーサー・タイプのようなメンテナンスに手がかかる自転車を使っている人は面接の時に交渉してみましょう。「手がかからないチャリンコで来い」と言われたら、そのチャリンコを買うために交通費の名目で金を出してくれるかどうか逆に聞くべきです。それがだめなら、最後の手段として「じゃあ、電車で来ますから交通費を下さい」と言えばいい。そして最初の月は定期を本当に買うわけです(これは買った定期を確認しているかどうか試すためです)。で、次の月からは自転車を使えばいい。社員に見つからないところへ止めておけばよいでしょう(ふつうバイトの退社時刻は社員の退社時刻よりも早いから、とっとと先に帰ればまず見つからない)。とりあえずはこんなとこですか。いかにいい加減なバイトだったか自分で暴露してるようなものですが、これでもそこそこ平均的なバイトの実態だと言えるように思います。それにしても、炊事用の手袋ばかりしているし熱いものを触っているから汗疹ができてる。んで工業用の油や鉄粉が付いた手をこれまた工業用の洗剤でガシガシ洗っているから手荒れも酷い。おまけに低温火傷の切り傷のといったありさまです。まあ鉄工所に勤めていたら当たり前のことですが、粉塵を吸い込んでるのは冗談で済みそうにない。別に成長期ノスタルジーみたいな、「日本のためにこれだけがんばってるんだよ、俺は」なんてことを言いたいわけではないですし。考えてもみると、バイトの働き方には大きく分けて二つあると思います。一つは客商売のスタイルで、客が来たら一定のスキルで応対するというものです。そしてもう一つは工場のスタイルで、はじめから仕事は用意されていますから、コンスタントに量をこなしていきます。客商売は基本的に客が来なければ仕事をする必要もないわけですが、工場では待たなくても仕事があります。「客が来なければ仕事をする必要がない」と言いましたが、それはテーブルを拭くといったことは慣れてくると自然にやるからです。そして客が来ないか、あるいはテーブルの客がオーダーを出さない限り、バイトどうしで喋っていても構わないわけです(もちろん客のオーダーを無視して喋り続けるのはだめですが)。工場の仕事は単調に続くので、仕事が頻繁に途切れたりはしませんが、その代わりに作業をしているあいだのバイトは別のことを考えていたり、仕事をしながらでも社員と喋り続けたりできます。この場合も、慣れてくると喋りながら仕事ができるようになるわけです。こういうわけで、いつも後から入ってきた人にわたくしが言うのは、「自分にとってこの仕事は慣れるのが早いかどうか」を確かめようといったことです。どちらにしても、慣れてくればその時間にそれをやっているのが当たり前だと感じられるようになるので、社員からすると不都合かもしれませんが「仕事」という重荷は消えて気分が楽になります。これはバイトを続ける動機として大きな要素です。

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