Scribble at 2021-09-08 17:31:23 Last modified: 2021-09-10 11:26:14

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予診票ジェネレータ

久しぶりに、ほぼ1年ぶりくらいでアクセスしたスラドに紹介されていた。もちろん、こんなオンライン・フォームなんて、いまどき高校のクラブ活動レベルですら無い。公開した本人は小学3年生からプログラミングを始めたとか ITMedia のような素人集団に早熟扱いされてるが、いまやこんなガラクタは〈現在の小学3年生が開発するレベル〉のフォームでしか無い。

開発者は取材に対して、「個人情報に関するプライバシーポリシーはないものの『システム内にデータが残るような設計にはなっていない。仮にログが残っていても、自分には見えないようにして、すぐに削除する』」などと言うが、これは色々な点で間違っている。そして、開発者本人が言っている、データをすぐに削除するといった些事にしか思いが至らない間違いよりも、寧ろコメントの前に書かれた ITMedia のライターによる知ったかぶりの一言の方が重大な愚かさを示しているという事実が皮肉だ。

このような場合、事業者ではないのだから、マネジメントシステムを前提にした安全保護管理の体制を本人へ通知するために公表するプライバシーポリシーなど必要ない。個人の場合なら、法令上で規定された「事業の用に供する」目的で個人情報を取得しているわけでもないので、せいぜい利用目的と取得する情報の一覧、あるいはユーザが分からないうちに取得するサーバのログとか GA の扱いとかがあれば書いておけばいいのだ。俗に言う「法令に基づく公表事項」というやつだ。これがプライバシーポリシーとは目的も内容もぜんぜん違う文書なのだと、僕も所属企業で15年近くに渡って研修などで何度も説明しているが、なかなか理解してもらうのは難しい。

従って、ITMedia のライター風情が書くような、こういう下らない指摘こそ、成果を公表するにあたっての無用な萎縮を生み出す「クリエーティブへの足枷」というものだろう。実際、本当にクリエイターの成果や創造性の足を引っ張っているのは、われわれのような管理系の実務家や企業経営者、あるいは僕らのように個人情報やプライバシーの保護が何であるかを法令や業界事情などに縛られずに思考して、全てのステークホルダの権益や事情を考慮して現実的な提案ができる Chief Privacy Officer ではない。実際には、メディアをはじめとして、生半可な知識で法律やルールや決まり事を押し付けたり、あるいは「常識」という名の凡人の思い込みをバラ撒いては、何事かを指摘したつもりになっている無能どもこそが無用な自粛を引き起こす元凶なのである。

それにしても、僕らは PMS (Privacy Management System) のプロパーなので「法令に基づく」という言い方に慣れてしまっているが、そもそも他人様のプライベートな情報をいっときでも自分の開発したシステムで扱わせてもらうにあたって、事前に何か断る必要があるかどうかを彼ら未熟な若者に教えるのは、プログラミングの教育者でもなければ ITMedia のような雑魚マスコミでもなく、周囲のごくふつうの大人だ。簡単に言えば、「法令に」基づこうと基づくまいと、人として何をするべきかという性根のところでちゃんと教育されたりものを考えている人間なら、小学生だろうと50過ぎのオッサンだろうと(法令や JIS としての情報を知っていなくても)気にする筈なのである。そして、こういう適正な情報の取り扱いにとって重要なのは、具体的な制度や技術の知識ではなく、そういう社会人としてのコンピタンシーなのだ。法律やプログラミングなんて、その仕事に携わるに値する能力がある人間には教えたら良いだけだ。無能にプログラミングなんて教えても無駄だし、人間には他にやることなんて幾らでもある。しかし、何かに気づいたり怖がったりする配慮をするかどうかは、単に指摘するだけでどうにかなるものではないし、大半の教育機関ではそんなことを教えていまい。

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