Scribble at 2022-02-14 17:54:53 Last modified: 2022-02-14 17:55:38

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Images of America

アメリカ合衆国のサウスカロライナ州はマウント・プレザントという町に Arcadia Publishing という出版社がある。1993年に創業してから主に地方史の本を熱心に出していて、"Images of America" という地方史のシリーズは、地元のいわゆる郷土史家に執筆を依頼し、2022年2月では8,000を超える出版点数を数える。それらは殆どが $21.99(約2,500円)でペーパーバックとして販売されているが、アマゾンでは価格にかなりばらつきがある(どういうわけかハードカバーが販売されていて、これは無視する)。やはりアメリカ国内での関心を反映した売れ行きと関係があるのだろうか、幸か不幸か数百円という価格(古本ではない)で安く手に入れられたのが、"Minidoka National Historic Site"(2018)というアイダホ州の国立歴史地区を取り上げた一冊であった。そこは、第二次大戦時に日系人を強制収容した場所であり、1万名弱の人々が3年に渡って収容されていた場所である。

この話で何が言いたいかというと、自分たちの先祖が行った(当時としては仕方がなかったという正当化は弁解は可能だが)不名誉な振る舞いについては、どこの国でも大っぴらに話題としたり関心を向け辛いものがあろうという話が一つである。そういう後ろめたい自国の過去について、当事者から蒸し返されるのも困るし、自ら進んで知ったり学ぶというのも、なかなか気が乗らないというのは分かる。そういう気分は、何も東アジアの辺境地帯にいるネトウヨと呼ばれる連中だけが「(日本に生まれ育ったという皮肉な意味での)在日特権」として感じるわけではないのだ。

そしてもう一つが、日本で多くの人々の些末な生活をなぞってはセンチメンタルな私小説のごとき「社会学本」を書いている人々も、これくらいの分量で圧倒的な業績を叩き出せば、われわれのような哲学者を納得させられるだろうと言いたい。暇潰しに気になった日雇い労働者や目立つ事件があった同和地区だけに関心をもったり、あるいは AV 女優の、それこそケツを追いかけるだけが社会学のフィールドワークではあるまい。

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