Scribble at 2022-08-01 17:38:53 Last modified: 2022-08-02 08:39:54

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「昭晃堂」という、既に2014年に解散・廃業した出版社の発行書籍を何冊か買い求めている。どちらかと言えば情報科学系ではなく電気回路などの本が多かったのだが、言語理論やオートマトンやコンパイラの本も何冊か出ているため、疋田輝雄氏による『コンパイラ』(ソフトウェア講座, 6, 1983)を手に入れた。この本は、理論的な内容が前半、そして後半は Pascal-T という小さなコンパイラを使って DEC 社製の PDP-11 という随分と古いコンピュータの上で動かすという体裁をとっている。あまり具体的な環境の特殊な話題に深入りはしたくないので、それほど丁寧に読むつもりはない(著者には気の毒だが、情報科学で具体的なプラットフォームや言語を前提に、或る意味で「わかりやすい」話をしようとすると、得てしてこういう限界なりリスクがある)。しかしコンパイラの本は多くないので、色々な人が議論している様子を眺めるのは興味深い。

それはそうと、この昭晃堂という会社の社名をあしらったロゴが表紙に印刷されているのだが、デザイナーならすぐに分かるとおり、「昭晃堂」の「晃」という文字が「堂」の側へ寄っているように見えるのが、どうも気になる。実際、ノギスで測ると「昭晃」のあいだよりも「晃堂」のあいだが 1mm ほど狭い。デザイナーがいないわけでもあるまいし、なんでこのままだったのだろう。

それにしても、僕は批判的なことを書く場合が多いけれど、出版社について何か書いたり関心をもつ人が少ないのは困ったもので、或る意味では気の毒でもある。僕のように雑誌出版社で編集の仕事をしていたとか、あるいは自分でも同人誌を作ったりしていた人間が興味をもつのは自然なことであろうから、さほど驚くようなことでもあるまい。でも、学術研究者の多くが何も書かないのは内部事情にも触れる可能性があるから注意しているのだとして、消費者が何の関心も持たないというのは残念なことだ。「理系」と自称する手合いは犬と同じくらいいるし、中でも「理系なのに文学や芸術にも興味があります」的な、これまた困った自意識プレイを演じる人々もいるわけだが、現実に理数系の本の出版社に興味や関心があるという人はほとんどいない。

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