2021年04月28日に初出の投稿

Last modified: 2021-04-28

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「T:積分の法則を使うと、∫x2dx=1/3x3(1/3x3)'=x2 となるから。」(https://hamaguri.sakura.ne.jp/simpson.html)

数学を生半可にしか理解していない(というか、そもそも中学レベルの数学をきちんと理解していない)人が大学の理数系を出たていどで気軽に数学の解説をすると、たいていは上に引用したようなものになる。できの悪い塾講師や学校教員にも、こういう馬鹿げた説明が「啓蒙」とか「教育」だと思ってる人間がいて、うんざりさせられる。上記のページを公表している人物は、ひとまず数学の本を出版までしているのだから、いちおう責任を問われて叩かれても良い立場であろうから、ここでこうして取り上げさせてもらう。

中学で幾何学を教えられたときに、なるほど生徒の中には疑問を覚える人もいると思う。円錐と円柱の断面図を考えて、それらを回転軸で半分に分割したら、円錐の断面図は円柱の対角線を使った直角三角形であり、これは円柱の断面図である長方形の半分の面積だ。よって、それらをそれぞれ〈回転させる〉という操作は同じなので、円柱の体積と比べて円錐の体積は 1/2 だと思ってしまうのも無理はない。

しかし、それは積分の式など持ち出す必要がない、ただの錯覚なのだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71557?page=3

このページで説明されているような仕方でも、おそらく中学生を納得させられない。結局、これら数学が得意なだけで他人にも教えられると勘違いしている人たちが致命的にまずいのは、子供や僕らのような数学が不得意な人間の多くは、「計算すればこうなる」とか「公式からこうなる」という仕方での説明では納得できないからこそ、悩むし理解が難しいと感じるのだということが分かっていないのである。公式に当てはめたらこう計算できるというだけで済むなら、誰も悩んだりしない。難しいのは、どうして円錐の体積が円柱の体積の 1/2 であるように思えるのに、実際はそうでないのかが分からないということなのであって、悩んでいるのは公式でもなければ計算でもなく、自分自身の考えかたについてだということを、数学の教員の多くは理解していないのだ。それゆえ、数学が得意な生徒にしかわからないような書き方の参考書を、キャバ嬢並みに短いスカートの女子高生に漫画で解説させるだけで「わかりやすい」などと思い込み、独りよがりにバラ撒いてきたのが日本の受験産業なのである。

円錐と円柱の関係、特に円錐の体積が同じ高さの円柱の 1/2 に見えるのは錯覚であることを説明するには、上のような図を使ったほうが良いと思う。錯覚が起きるのは、A で円柱と円錐の断面図を描いたときに長方形と直角三角形の面積が2:1になっているからだろう。ここから、それぞれを 360 度にグルリと回すという点では同じなので、体積も(なぜか)比例して2:1のままだと考えてしまう。しかし、もしそうなら A で円錐の断面図である直角三角形(オレンジ)を差し引いた残りは青い色で示したような直角三角形であるから、これを〈或る仕方で〉回転させたら C のようになるが、これは実際には A に描かれている青い直角三角形を〈想定する仕方で〉回転させてできた回転体ではない。本来は D のような、B でできた円錐をくり抜いたようなものになる。そして、これは C と比べてどのていどの体積になるのかは見ただけでは分からないが、数学が苦手な生徒にとって「わかる」とは、そういう計算のことではなく、自分が何を分かっていないかを分かるということなのだ。

しかし、これでもまだ納得しない生徒がいるかもしれない。C と D は回転の仕方が違うだけであって、やはり体積が同じようにしか思えないというわけである。〈想定した仕方で〉回転させるかどうかは、それこそ視覚的に自然かどうかの問題にすぎず、それだけで C と比べて D のように回転させた体積が大きくなるという根拠にはなっていないんじゃないか・・・多くの数学教師は、このような生徒を「出来の悪い」生徒だと見做すであろうが、実は論理的な思考をしているのは生徒の方なのであり、この段階まで進んできた生徒を納得させられない数学の教員は、はっきり言って知的な風土を醸成するという教育の目的にとっては逆に邪魔であり、教員免許を返納するべきだと思う。

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