Scribble at 2020-03-28 23:55:50 Last modified: 2022-10-03 07:37:59
自分の国に恥ずべき実態があることを頑なに認めない人間が国を愛するなどと口にするのは、はっきり言って自己欺瞞だろうと思う。つまり、そういう人々は、《日本》という自分自身の出自を軽んじられると、《日本に生まれ育った》という事実しか取り柄がない(と思い込んでいる)ので、他に自らの尊厳を維持する根拠がない(と思い込んでいる)ゆえに、自分自身を否定されるように感じるからなのだろう。僕は、この手の観念は凡人がしがみつきやすいイージーな妄想であるがゆえに、いつの時代でも危険なものだと警告したい。過去の、しかも自分の先祖が中国人を太平洋戦争でどれほど惨殺したり、自分の先祖が関東大震災で在日朝鮮人をどんなふうに虐殺していたとしても、それでも自分たちは一人の人間として尊厳をもって遇されるべきであると言いうるためにも、やはり過去に不当な理由で殺された人々が(たとえ実際には被害者が一人だったとしても)いたことを認めて、それは起きるべきではなかったという見識を示してこそ、そういう過去をもつ人々の子孫だというだけで差別される道理はないと言いうるのだ。
上記の記事では語られていないが、現在の技能実習生制度もアメリカの国務省からは既に奴隷制度の一種だと見做されて監視対象となっているのは、何度か報道されている筈だし、change.org でも同じ認識の上で技能実習生を廃止してもらいたいという提言がある。今日の朝に NHK で報道番組を観ていると、日本の農業が衰退しているというお題目を掲げては、昨今の感染症による渡航制限で技能実習生が日本へ来ないと仕事が続けられないと発言する農家、いやそれどころか JA の人間まで外国の若者を完全に《安上がりの季節労働者》と見做している様子が分かって、唖然としたものだ。誰もかれもが、いかにも日本人という温厚そうな表情で話していたものの、その内容は全くの人間のクズとしか言いようがない。これを、凡人のささやかな悩み苦しみなどとドキュメンタリー番組よろしくセンチメンタルに扱っていていいものなのかどうか。もし観光を柱にして海外から見た印象を重視するのであれば、代議士や官僚には真面目な調査と、それから単なる票田の皮算用だけではない思考を求めたいところだ。
敢えて言うが、無能な農家が廃業しようと、日本の農業の衰退とは何の関係もない。寧ろ、個々の事業者が破綻することと日本の農業の行く末が直結するなどと、よくも傲慢な思い上がりを口にできるものだと言いたい。