Scribble at 2022-10-05 17:18:10 Last modified: 2022-10-08 09:23:57

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消費税インボイス制度が 2023年10月1日にスタートします。どのような制度かまだよくわからない人に、専門用語、難しいことば、数字を使わず、誰でも、中学生でも、小学生でも理解できるように描きました

誰でもわかる 消費税インボイス制度の解説漫画

漫画を描いた当人が Twitter で拡散してほしいと希望しているので、当サイトでも紹介したい。ただし、企業の役職者としての批評とセットだが。こういう漫画やイラストを使った解説を意図した作品というのは、特に日本では描かれたということ自体に熱狂する人々が多くいて、作品が正確で適切に物事を伝えたり描いているのかとか、そもそも漫画やイラストで描く必要があることなのかとか、そういった批評を見受けない奇妙な風習があるため、同様に学術や通俗書においても、物事を図や表やイラストで描くということについての厳密で公正なガイドラインとか批評とかが出版業界にも学術研究の団体にも存在しない。少なくとも哲学においては、国公立大学の博士課程の学生だった経歴をもつ者として言わせてもらうが、「皆無」だと言える。同じように文章構成や論文作成の実務として、アナロジーとか、あるいは分析哲学の未熟な人間が好むアホみたいな SF 話や喩え話の類にしても、その厳密さと正確さの基準なんかがメアリー・ヘッセらの数少ない例外を除いて、真面目に議論された事例など殆どないだろう。漫画ならなんでもいいのか。水槽に入った脳の話をしたり、雷に打たれたおっさんの話をすれば何でもオシャレな分析哲学になるのか。そんなわけあるまい。

こういう漫画やイラストが現れると、たいていは「わかりやすい」という反応で埋め尽くされた称賛で消費されるのだが、原理原則の話をすれば、人は〈わかりやすく〉自分の錯覚や誤解を説明できるし、〈わかりやすく〉思わせる嘘だってつける。営業代理店なんて、そういうテクニックばかり訓練しているところだ。ゆえに、〈わかりやすい〉説明なんてものは、知的な意味での未熟児が食べられるにすぎない離乳食である可能性だってあるのだから、物事を正しく的確に説明していて他人に推奨できると言えるための基準にはなりえないのである。そして、オタクなんかどうでもいいが、漫画やアニメやイラストを、そういう原理原則に沿って批評するということが欠落した状況では、バカの蘊蓄話とか低レベルのポエムばかりが「批評」として垂れ流されることとなる。漫画やアニメなどの作品は評価され多くの国で読まれたり放映されていても、それらの評論や研究については全世界の文芸界や学会から日本の成果は無視されているという明白な事実が、こういう実情をよく表している。日本においては、漫画やアニメなどの作品にとっての最も優れた批評は、他の作品なのである。

ということで、来年の制度施行を控えた企業の管理系役職者という立場で、上に紹介した漫画を手短に批評してみたい。もちろん、僕にはキャラのデザインとか漫画を描く技法についての知識や経験はないので、そういう点について良し悪しを個人の好みとして語る以上の資格はない。よって、その手の話はしない(個人の感想としてだけ言うなら、メイドさんはともかく他のキャラは何か非常に古臭いテイストを感じる。それこそ1970年代の劇画漫画雑誌とかに掲載されたギャグ・マンガのキャラクターを眺めているような、ちょっとクラクラするような印象を受ける。古物趣味でもあるのだろうか)。それから、上の漫画の作者については、Twitter のプロフィールで「会社経営者」としか書かれていないので、企業の経営について一定の知識がある方だとは思うが、年代も知らないし、財務や経理についてどのていどの知識や経験があるのかもわからないため、特に筆者という人物についてどうこう言ったり想定するつもりはない。

では最初に、漫画では益税という言葉を説明しているが、そもそも「益税」と呼ばれる利得があったと理解していた人は、個人事業主でどれくらいいたのかと思う。見積書や請求書の小計に消費税ぶんを加算する意味、そしてその消費税を自分は事業者として納めていないとか、納める必要のない控除対象の事業者であったという事実を自覚してた人はどれくらいたのか。ここで「恩恵」だと言われても、多くの人には違和感があると思う。その恩恵が受けられなくなって困る〈弱者〉という描き方をしているが、これは偏った解釈だと思う。

次に、インボイス制度が始まると個人事業主は税務署で事業者の登録をしてインボイス番号を受けて受注する(つまり納税する)か、無視して仕事を失うかという極端な二者択一を描いているが、それは単純すぎる。常に発注側の企業が強くて個人事業主が弱いとは限らないからだ。たとえば、弊社はネット・ベンチャーとウェブ制作を事業としているが、予算の都合で選択肢が少なく発注先を選べない場合とか、あるいは上流のクライアントからの指定でインボイス番号をもってない人に発注せざるをえない場合もある。

それから、結論のように「国以外誰のメリットにもならない奇妙な制度です」と書いているが、こういう断定もちょっとどうかと思う。この漫画は財政という観点は完全に欠落してるのだから、制度そのものに意味があるかないかは言えないはずなのに、歳入が増えるということに意味がないとか効果が弱いというのであれば、それは最近の若者に多くなっているらしい、アイン・ランドのようなアメリカ流の成金主義やリバタリアニズムを筆者が漫画で代弁したり煽っているのと同じであろう。(なお、筆者がリバタリアンであるかどうかは知らないが、消費税による益税を個人事業主に残してあげるのは制度的な配慮なのだから、要するにリバタリアンの主張というものは、自由主義を口にしているようだが、実際のところ自由を制度的に保障するという意味での国家社会主義なのだ。)

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