Scribble at 2021-09-22 17:33:18 Last modified: 2021-09-22 17:43:17

マッキンゼーだろうとトーマツだろうと経営コンサルティング企業の公的な実績なるものが全く信用できない明白で最大の理由は、たとえば『戦略のパラドックス』でも指摘されていることだが、彼らの失態は放っておいても誰にも分からなくなってしまうという事実にある。

たとえば、コロナ禍で今月の運転資金にも困ってる会社に対して、「10年後を見据えて経営戦略を立てよ」などと言っても無意味であろう。でも、彼らは平気で言う。そして、彼らに従った経営者が、金策に走るよりも、経営書を読んだりシナリオ・プランニングに時間を費やすなら、その会社が倒産するのは明らかだろう。でも、大多数の場合に倒産した企業の情報は雲散霧消してしまい、回収したり復元することは不可能となり、誰かが財務や資産のデータを全て保存しておくなんてことはない。つまり、失態の記録は残らないから逃げ切れるというわけだ。帝国データバンクや東京商工リサーチが提供する企業の倒産情報にしても、それぞれの会社がどういう経営コンサルを利用していたか(あるいは全く利用していなかったか)なんて全く書かれていないし、恐らく帝国データバンクでも知り得ないだろう。

前段で書いた「逃げ切れる」という言葉は、経営者がコンサルを訴えても勝ち目はない(コンサルは助言したにすぎず、そのとおりにやるかどうかは経営者の自己責任である)というだけではなく、事実についての学術調査からも逃げ切れるという意味でもある。仮に、ボストンやアクセンチュアの真の実績として 99% が誤った助言であったか、内容の是非に関係なく経営陣から無視されたとしても、その事実は決して残らないし、開示もされない。彼らは 1% の成功事例を必死になって本や雑誌記事へ書いて回るし、実のところ倒産した企業の記録が殆ど残らないのだから、悪意があろうとなかろうと、それしかできないのである。よって、生存バイアスだとは指摘できても、生存バイアスを避けるために失敗事例を参照せよと言われても、それはできない。

そして、恐らく経営コンサルというのは、その事実にあぐらをかいていると思う。倒産した企業の記録は残らないし残そうともしないという事実を分かった上で、自分たちが介入して成功した事実は残るため、それにだけもとづいて実績を紹介したり宣伝すればいいわけである。もちろん、それが一つの成功であることは確かだが、その成功と彼らの介入にどれほどの関連性があるのかは分からない。よって、信用できないわけである。

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