Scribble at 2022-04-08 17:02:34 Last modified: 2022-04-08 17:03:39
新興出版社啓林館というのは、僕の母校の近くにある教育関連の出版社だ。もちろん、近くにあるからといって高校時代に足を向けたことはないのだが、こういう特殊な用途だと大阪にも出版社があるのは良いことだと思う。電子書籍もたくさん売れる時代になってきたのだし、著者がどこに住んでるとか、あるいはロジスティクスを気にする理由が全くなくなるわけだから、これから色々なところで出版事業が始まってきたら面白いとは思う。
それはそうと、地学が高校生に選択されていないという。いくつか事情はあると思うのだけれど、先日も高校の地理について書いたように、どうも「地学」や「地理」というのは看板に偽りがあるように思える。地理が雑な社会学に見えるのと同じく、地学も多くの高校生は「地球科学」の略称であることすら知らないらしいし、知っていたとしてもなんで「地学」などと省略するのかも分からない。すると、「地」という言葉を使っていながら地層や地形だけではなく気象や海流についても学ぶし、場合によっては天文についてすら学ばなくてはいけない。そして、教科書でおおむね高校にだって薄々は感じ取られているはずなのだが、これだけ広範な分野をひとまとめにして、解説や記述が雑にならないわけがないのだ。そして、それに加えて応用分野という印象が高校生にも伝わってしまうのだろう。岩の風化なんて化学を勉強しないで厳密に議論したり理解できるわけがないし、地形の変化についても土質力学や水理学なしに何をうわべの理屈だけ学べというのか。
あと、物理や化学や生物と比べて決定的なのは、地学の業績にはノベール賞のような際立った称賛を得た実績がないというのも興味を惹かない理由の一つなのだろう。地学をやって大学に進んだところで、もっとも成功した人は誰だろうか。竹中工務店の部長にはなれるのか? いやぁ、たぶん数学とかやってたほうが有利ではないか。