Scribble at 2023-02-22 17:38:50 Last modified: 2023-02-23 01:02:10

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色々な商品が出てくるので、『ヤフオク!』は面白い情報源ではあるけれど、ここで剃刀を買うつもりは全くない。砥石を買って研磨の技能を身に着けるなんて時間もお金もない者にとっては、しょせん安全剃刀が現代のベストな道具に思えるので、traditional straight razor はどう考えても趣味的なものでしかないからだ。特に『ヤフオク!』は、骨董品業者とマニアの駆け引きしかないと言える、くだらない市場だと思っているので、参加するつもりなんて全くない。それこそ、金があって traditional straight razor を使いたいなら、即座に DOVO Solingen か Boker の通販サイトで新品を買うべきである。

上記は、さきほどアクセスしたオークションの様子だ。だいたい入札の時間切れが近づくと、業者とマニアで値段のつり上げが始まる。そして、実際のところはこういうのは自作自演も多い。自宅と事務所で二つのアカウントを登録して、どちらかが入札役を演じて、売りたい値段あたりまでわざと吊り上げる。売れなくても、自分で入札して「同じ都道府県の近くにいるかたが引き取ってくれました」的なポーズを繰り返せば、別に Yahoo! Japan から何の疑いもペナルティもない。そして、暫く様子を見ていると同じ商品と思われる剃刀が別の剃刀とセットで出品されていたり、値段が付いて落札された筈の貴重な日本剃刀が違う角度から撮影されて出品されていると思われる事例が見つかる。もちろん、これは自作自演とばかりは言えないが、それでも転売目的で何度も違う業者が同じ剃刀を出品しているなら、消費者にとっては自作自演と同じことである。こんな茶番につきあって、出来損ないの剃刀や使い物にならないクズみたいなものに1万円どころか5,000円を出すべきでもない。僕らは髭を奇麗に安全に安価に手早く剃るのが最大の目的である。かろうじて趣味として時間をかけてもいいし、多少はリスクがあってもいいと思って剃刀で剃っているけれど、大枚をはたくなら理容室でプロに剃ってもらうのがいい。

これは、他にも Etsy なんかを見ていても分かる。Etsy には、いまだと旧ソ連時代の剃刀が大量に出品されていて、その多くは、送料を別とすれば本体が3,000円くらいで手に入る(もちろん、いくら貧乏だとは言え企業の部長がカード払いで買えないような値段ではないから、買おうと思えばいつでも買える)。世界中にいるであろう男性のうち、西洋剃刀を使う趣味のある人がどれほどいるかは知らないが、恐らく日本とは比べ物にならないほど多くの人数であろう。そもそも、traditional straight razor の復古ブームは海外から始まったのである。それでも、3,000円くらいの剃刀がぜんぜん売れずに出品されたままだし、たびたびセールになって1割ほど値引きされるというサイクルの繰り返しだ。別に状態が酷く悪いとか、刃が欠けているわけでもない。確かに、いまのロシアの状況を考慮して買いたくないと思っている人が多いのだろうけど、旧西ドイツの Solingen で製造された名品の剃刀だって売れ残っているのだ。

つまり、一時期に比べたら traditional straight razor の利用者が増えたと言えるのかもしれないが、やはり製造する側にとっては事業として維持していくのが難しいていどにしか市場がないということだ。そして、それは骨董品であろうと同じことなのである。よって、需要と供給の単純な理屈として、そもそも売れ残っているか骨董品屋が漁っているだけの中古の剃刀なんて、せいぜい1,000円や2,000円で買えないものは、どれほど美麗で有名で、やれ玉鋼だ伝説の誰それ作だと言っても、生活用具としてのコスト・パフォーマンスは論外なのだ。特に日本剃刀なんてものは、美術品としては残ってもいいけれど、誰が作ろうと高額商品にしかならないものなんて、生活道具としては即座に市場から消え去るべきである。そういう成金だけが暇潰しに揃えて眺めていればいいようなものは、生活の道具ではないのだ。それこそ髭を剃るというだけの問題なら美術品なんて必須でもなんでもない。「名品」を手にしているだけのマニアの技能なんて半年で越える自信があるね。

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