Scribble at 2021-07-17 11:33:07 Last modified: unmodified

コマンドライン、それからデスクトップ・アプリケーションとしても開発が進んでいるというウェブ・コンテンツのアーカイブ・ツールだ。これまでにも、僕は Firefox のアドオンである Scrapbook の話を紹介して、ウェブ・コンテンツ、とりわけウェブ・ページをローカルに保存して管理することに、結局は意味があるのかどうかという議論をしてきた。自分で10年以上も続けてきて言うのは変かもしれないが、実はアーカイブしたコンテンツが調べ物とか学術研究とか当サイトの記事を作るのに役立ったと言えるケースは、非常に少ない。それは、少なくとも成果の一部である当サイトの記事をご覧いただくだけでは分からないだろう。僕が当サイトで公開したいと思っているコンテンツのプランは、その一部をご紹介したことはあるが、分量としてはページ数にすると現在の当サイトの10倍以上にはなる筈である。そして、実際に当サイトのコンテンツを制作するために役立てたページが、僕が実際に保存しているページの中でどれくらい僅かなものでしかないかも、具体的な数字を出さなければ傍目には分からない。つまり、アドオンで保存しているページの大半は、保存した後から全く一度も目を通していないのだ。

しかし、保存しておくべきだと思って保存したページが実際に手元にあるという事実だけでも、ひとまず安心できる。Internet Archive に保存されているとは限らないうちにサイトが閉鎖されたり、あるいは URI が変更されて検索し直す手間がかかりすぎるといったことを心配しなくて済む。URI が変わっても、典拠表記として "retrieved on" という追記をすれば、古い URI（つまり現在はアクセスできない URI）で参照しても構わないし、参照する方にはそうするべき責任が逆にある（新しい URI になって内容が改変されたり修正されている可能性もある）。

というわけで、実際に再利用しているページは少ないものの、手元にあるだけでも意味があると思っている。しかし、厳格な考察を経て〈本当に将来にも渡ってそう明言できる〉かどうかまでは保証できない。ぶっちゃけ言って、ウェブ・ページなど全く無視しても人は〈よく哲学する〉ことはできるし、もちろん〈よく生きる〉ことだってできるからだ。いまやウェブ・ページを敢えて全く利用しないというのは視野狭窄を生じる重大な過失とすら言えなくもないが、しかし原理的に人がそうなると言えるだけの認知科学的な根拠はないのだから、ウェブを全く利用せずにものを考えたり論じる人々を無条件で非難できるものでもない。そして、逆にウェブ・ページを渉猟することに疲れ果てたり、あるいは「乱読家や多読家に偉人なし」という僕の金言が示すように、ものを読んだり観たりする分量と知性や業績が比例するなどというのは、全くの妄想でしかない。

とは言っても、身一つで的確な理解や健全な思考を維持できるかどうかに自信など無いので、他の人々が考え、議論して語るところから学びたいと思うのも、限られた能力しか無いわれわれ凡人の節度や見識というものであろう。と、色々な議論をぐるぐると回っては、いまのような生活を続けている。もちろん、アーカイブすることが自己目的化してしまってはいけないので、せいぜい毎日のこととしてローカルに保存するのは50ページにも満たない分量だ。場合によっては一日を潰して手作業でページを保存したり、あるいは数十ページを自動処理で保存することもあるが、そういう機会は年に１回すらない。よって、時間や労力という点でのコストを過剰に費やしているわけでもないのだが、この程度でも10年以上の月日が経過すると500GBくらいの容量になる。恐らく、健康状態や収入がそれなりに（低い水準ではあっても）安定して生活を続けられる限り、こういうことは80歳になってもやってる可能性がある。確かに80歳で最新のプログラミング言語のオンライン・マニュアルをローカルに保存してどうするのかという冷ややかな視線はあろうが、有能な人間は80歳でもそれなりのプログラムを書けることは海外でも多くの実例があるし、僕は Tony Hoare らのような並外れた人々とは違うけれど、そのへんに掃いて捨てるほどいるコーダやプログラマを相手にシステム開発を指揮するていどの能力は80歳でも維持している自信があるので、それは30年後に当サイトの記事として何か成果を（NDA に反しない限りで）公開できれば証明になろう。