Scribble at 2022-02-14 08:44:38 Last modified: 2022-02-14 08:52:14

色々と経緯はあったが、結局のところ印刷物の多くも版下は Photoshop で制作している。印刷物、つまり紙媒体で出力する版下は Illustrator で作る「べき」ではないかという、嫌なアカデミズムに毒されていた時期もあったのだが、使い慣れていて、目的を果たすために十分な機能が揃っていれば、Photoshop で「会社案内」や名刺や年賀状の版下を作って何が悪いのか。そもそも、道具に決まりきった役割や使い方など決めつけてはいけないのがデザイナーというものだ(とはいえ、それがもう一つの嫌なアカデミズムになったり自意識の捌け口になってはいけないので、オーソドックスな使い方にも十分な意義がある。一流のデザイナーだからといって、その誰もが自分のケツにアクリル絵の具を塗って絵を描くわけではないのだ)。

僕は Illustrator のユーザとしても10年以上の経験があるけれど、やはり道具として馴染まないところがある。その最も強い理由は、皮肉なことだが、僕の用途や使い方の範囲で言えば Illustrator でやることと Photoshop でやることとが殆ど同じだからだ。どちらでやってもやることが同じであれば、どうしてわざわざ別のアプリケーションを立ち上げて、UI のカスタマイズから動作設定やブラシまで管理しなくてはいけないのか。しかも、両方のアプリケーションでは読み込めるブラシなどのフォーマットが違うので(Photoshop は .tpl で、Illustrator は .ai だ)、全く同じ値のブラシでも別々の設定ファイルとして保存し管理しなくてはいけない。こんなのどう考えても不合理だ。

そういうわけで、もう数年前から会社の「会社案内」という冊子も版下を Photoshop で制作している。中小零細企業の冊子なんて複合機で出力してステープラーで留めるくらいが関の山で、それが身の程というものである。わざわざ毎年のように作り替えるものを印刷屋へ発注して作ってもらう必要などないのだから、彼らの入稿ルールに合わせる必要がない。そして名刺も、ロゴなど版下のフォーマット部分は既に印刷会社にデータがあるので、昨今では氏名や電話番号などをオンラインのフォームで指定すれば差し替えて印刷してくれるから、文字を全てラインアウト化して Illustrator 9 の形式で保存するといった原始人のような作業をしなくて済む。

もちろん Illustrator が必要な用途もあろうし、必要な人もいるのは分かっているが、そろそろ業務用のマシンからアンインストールしても差し支えない状況になっている。事実、当社の昨年度の会計年度にあっては Illustrator を起動して作業した実績が全くなかった。

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