Scribble at 2025-01-27 12:26:22 Last modified: 2025-01-27 14:08:05

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いまちょうど(いつものことだが)画像生成 AI のコミュニティ・サイトである Civitai.com というサイトが ongoing maintenance というか、サイトを開きながらメンテナンスしてるような状況で、セッションが切れててログインもできないし、サイトが(なぜか広告以外は)まともに表示できない状況なので、こういうサイトなりビジネスについて僕の意見を書いておきたい。

僕は、こういうサイトはあんまり利用しない。理由は明らかで、投稿されている画像の大半が「クズ」だからだ。もちろん、既に職業と言っていいような実績と品質の画像もあるにはあるけれど、僕が見たところでは「クリエイター」なんて名乗るに値しない。最新の FLUX や SDXL がもつテキスト解析と画像の描画能力に大半を依存した「オペレータ」というものであって、それを出力した後に Photoshop で再加工するような手間すらかけないのだから、そんな連中をプロのクリエイターと呼んだり登用したりするのは、僕は全ての業界や業種や分野(つまり本来のクリエイティブだけではなく、生成 AI のエンジニアリングの業界にとってすら)良くないと思う。学問でも勉強でも仕事でもそうだけど、参入障壁を下げるのはいいとしても、成果物を評価するハードルを下げていいことなんてないんだよ。そこを取り違える人が多いからこそ、まさしくウェブ制作の業界でも起きているように、単なるアマチュアみたいな連中の仕事の安売り競争になっていくわけだ。生成 AI の場合、マシンのスペックという初期投資だけでバカでもイラストが同じていどの所要時間で描けるのだから(しかも分散モデルが向上しているので、何にもしなくてもどんどん破綻のない絵が出るし、あと数年もすれば30分番組の動画だって吐き出すようになるだろう)、評価の基準が下がってしまうと、あとは金額という問題しか残らない。

そうなると、ワープロ入力業という仕事が消失したのと同じく、そもそも発注する側の人間が簡単にキレイな画像や動画を作れるなら、他人に金を払って発注する必要なんてないということになる。ワープロだって、みんなが Microsoft Office の WORD やら一太郎を使って美しい文書を自分でタイプするだけで印刷できるようになると、なんで他人に発注なんてする必要があるのってことになる。同じことは、画像や動画の生成 AI でも起きると思うね。

でも、それゆえにプレゼン資料も他人に任せないで自分で作る人ばかりになって、デタラメで無意味なプレゼンのスライドを作るサラリーマンばかりになったし、彼らが自らスライドを綺麗に効果的に作る知識や技能なんて学ぼうとしない。よって、そこでは技能やノウハウという意味での品質向上が頭打ちになって数十年が経過してしまったというわけだ。僕に言わせれば、いまのサラリーマンがつくるスライドの 99.99% なんて30年前のサラリーマンが作ってたスライドと殆ど同じレベル(つまり効果的な見せ方でもなければ美しくもない)だよ。

もちろん、僕自身も生成 AI のユーザとして自宅では大量の画像を作っているけれど、さほど他人に見せるようなものはないと思っているし、せいぜい会社の研修で教材に使うていどだ。それ以外に、幾つか実験してみたり、あるいは自分自身の写真を使って LoRA という追加の学習データを作ったりするが、こんなもんはいちいち他人に見せたところでしょうがない。それから、こういう loRA のようなフォーマットにしても、いまどんどん理論から実装にいたるまで新しく色々な(つまりは互換性のない)フォーマットが提案されたり実用化されているので、いまある技術や運用手順やフォーマットを習熟しても、その「賞味期間」が1年にも満たないという状況だ。たとえば、僕は生成 AI をなんとか動かせるていどのスペックのマシンしか使っていないので、Stable Diffusion の 1.5 しか使っていない。でも、昨年には次世代の 2.0 どころか 3.0 や 3.5 も出ているし、新しいフォーマットの FLUX といったものも登場していて、僕の環境では全く動かして試すことができない。オンラインだとお金や時間や生成できるコンテンツに制約がある。ということで、特定のプラットフォームやフォーマットへの過剰なコミットは控えているというのが実情だ。

そして、上のような画像とかモデルの共有サイトというのは、やはりどう見てもこれから色々なところから訴えられるリスクがあると思う。もちろんオンラインで生成された画像の多くが、無修正の本番画像だったり、アニメキャラのフェイクだったり、それどころか写実的な画像ともなると実在の人物のフェイクなのかどうかすら判断できない。これではメルカリやヤフオクのような脱法プラットフォームと言ってよく、遅かれ早かれテロリストや北朝鮮やヤクザの「しのぎ」やコミュニケーションやロンダリングの場として利用されることになるのは必定だろう。たとえば、オンラインで画像を生成するために必要なポイントというのがあって、ゲームで言うところのゲーム内通貨のようなものだ。これでピンと来る人がいると思うが、そういうポイントをたくさん持っていたり、あるいはゲームでいう「最強装備」に匹敵する、フォロワーがたくさんいるアカウントとかを、RMT で販売する人が出てきたりするわけで、もちろんその大半は北朝鮮の軍人とかヤクザなわけである。

こういうサイトに期待して集まってくるユーザの大半が、しょせんはセーラームーンの本番シーンが見たいという鼻息の荒い世界中の男の子たちであろうという点からしても、Civitai にはアンドリーセンの投資会社までついているようだけど、先行きは怪しいと思うね。というか、マネタイズとしてもどうなんだろうと思う。現に、いまサイトのメンテナンスで更にたくさんの広告を貼り付けようとしてるようだし、広告収入という短絡的なアイデアしかないというところが、もう既に経営として行き詰まってる証拠だと思うよ。どれだけユーザが増えようと、法的にも、デザインの技巧に及ぼす影響力としても、それから財務的にも将来性のないサービスという印象がある。実際、Hacker News で "civitai" と検索しても、せいぜいアンドリーセン&ホロウィッツから投資を受けたという記事に47くらいの upvoting が付いてるだけだ。これは、Hacker News のように若手の起業家が集まるコミュニティではビジネス(モデル)として注目に値しないとスルーされている証拠だ。

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