Scribble at 2025-03-27 06:59:10 Last modified: 2025-03-27 13:23:57
英語の言語現象を独自の視点で解説する体系的・網羅的な英文法書。著者の言語学的知見に基づいて当該言語の文法体系を示した既刊『フランス語文法総解説』『日本語文法総解説』と三部作をなす。これまでの研究業績を踏まえつつ、豊富な例文とともに英文法の全体像を新たに描き出した。
昔から生成文法の解説者として数多くの通俗書を手掛けている人物だが、いわばガチで言語学の精密な立場から英文法を解説した本だ。昨日、書店で見かけて「またぞろマチケンの通俗本か」と思って手に取ってみたら、いい意味で予想を裏切られたので即座に購入した。ただし、幾つかの注意点がある。
まず日本語の文章として非常に読み辛い。新書などでの軽快な調子から、研究社の本格的な文法書として手掛けたという気負いがあったのか、回りくどい言い回しや構文が多くて面倒な文章だ。ただし、それだけのことはあると納得させられてしまうくらい、文章の内容は精密かつ正確だ。たぶん英文科の専門課程の学部生ですら読むのは疲れるだろうと思う。もちろんだが、「大人の復習」といったノリで購入しても歯が立たないと思うので(そもそも本書で使われている日本語にすら用語解説がある)、英検2級以下の方は綿貫氏の『ロイヤル英文法』などの受験で使われる定番の詳しい文法書を勉強してから手に取る方がよいだろう。
それから、本書は殆ど学術研究書みたいな調子で書かれているので、従来の受験参考書や TOEFL などの資格試験対策本などのような「要点」だとか「落とし穴」だとかいった読者向けのサービスは皆無だ。無意味な色刷りもないし、見出しも必要最低限だし、例文も(町田氏が序文で十分に効果的な解説に使えるよう、緻密な配慮で例文を作ったと書いているように)日本人が書く参考書によくある sexism や階級差別・職業差別丸出しの文など一つもない。ほぼ学術書として読むべき一冊だ。
ということなので、僕が当サイトの「英語の勉強について」という論説で述べてきた内容が、この一冊で補強されたと思っている。町田氏が詳しく解説しているように、英語は例外的な用法や綴り方もあるし、日本語と同じくらい地域差や男女差や出自による違いもあるし、当然だが TPO でも細かい文法や単語の使い分けがある。よって、「日本語は情緒的で、英語は論理的な言語である」とか、「日本語は難解な言語で、英語は(80幾つかのフレーズで話せるといったインチキ広告でも分かるように)簡単な言語だ」といった話が、すべて偏見やデタラメ、あるいは日本語についての浅薄なナショナリズムや無理解(X やニコ動などにいる純粋日本人様に限って言語学の知識も日本語学の知識も、いやまともな日本語の運用能力もなければ歴史的仮名遣いですら文章を書けない無知無教養どもだ)による錯覚だと分かる。
もちろん、僕は英語の方が難解だなどと愚かなことを言いたいわけではなく、そもそも母国語でない言語を習得するのは誰にとっても難しいのだ。とりわけ、たいていの日本人のように切実な動機や事情や理由もないのに、気楽な趣味として英語なり英会話を勉強しようなんて人には、英語は永久に習得できないと思う。ましてや、80フレーズで話せるだの100個の単語でいいだのというチンピラどもの御託に期待して、生活なり生きる手段としての言語をたやすく身につけられるなどと考える連中は、どのみち自分たち自身の使う日本語すらまともに運用できていないに決まっているのだ。