Scribble at 2022-12-09 20:25:33 Last modified: 2022-12-10 01:28:42

添付画像

巴川製紙所での製造・販売が終了したあと、「トモエリバー」は石川県の三善製紙という企業に譲渡されました。そして、20年以上もほぼ日手帳の使い心地を支えてきた特長を受け継ぎ、「より裏抜けがしにくく」「同じ厚みでもより軽く」「紙の繊維を整えて表面がよりスッキリ」改良した新しい手帳専用紙ができました。

来年から切り替わる新しい「トモエリバー」を試してみてください。〈手帳2023予告〉

コピーライターが社長やってる会社だから巧いと言えば言えるんだろうけど、上記のような書き方って取りようによっては『ほぼ日手帳』のためにトモエリバーが開発されたかのような誤解を与えると思うんだよね。それ全くの間違いだから、念のために書いておこう。トモエリバーを株式会社ほぼ日に供給している株式会社巴川製紙所は、社名のとおり製紙業から出発した会社だが、現在は機能紙事業、電子材料事業、トナー事業をメインにしていて、印刷用紙の事業は中核とは言えず、パルプ事業からもとっくに撤退している。寧ろ、まだ紙を製造していたのかと、逆に驚く取引先もあろう。よって、金沢の三善製紙株式会社に事業譲渡したとはいっても、別に紙屋さんが廃業したとかではない。そもそも株式会社巴川製紙所は、株式会社ほぼ日の10倍を超える売り上げの上場企業だ。2019年にトモエリバーの製造現場を訪れたという記事がほぼ日のサイトで公開されているが、上に添付したような写真で株式会社巴川製紙所を紹介したら、本社は京橋トラストタワーにあるというのに、まるで静岡のしがない製紙工場みたいに見える。そして、そういう小さな工場で作られている品質の良い紙を見つけて使ってるんですーみたいな体裁だと、いかにもそういうのが大好物の、東京の田舎者が飛びつきそうなファンタジーではないか。ぼくたちわたしたち、手帳にセコいイラストやメモをせっせと書いて他人に見せびらかすくらいしか能がない凡人でも人の役に立てる、みたいな・・・でも違う。株式会社巴川製紙所は手帳用の紙なんて作り続けてもしょうがないという業容や事業規模の会社だからこそ、他の会社に洋紙事業を譲渡したのだ。

あと、トモエリバーは紙製品として製造されていたわけだから、それを既に使っていた会社があったわけである。糸井重里が紙工場の親父と徹夜で議論して生み出した、みたいな御伽噺を聞きたいなら、青山あたりの中身空っぽなロハス系の雑貨屋とかに行けばいい。でも事実は違う。トモエリバーは1980年代に開発された紙であり、薄くて軽いのに裏移りしにくいことから、器具の取り扱い説明書や参考書の印刷にも使われてきたし、手帳についてもレイメイ藤井など文具メーカーが、ほぼ日手帳よりも前から採用している。これのユーザでも本当に多いんだよ、トモエリバーがほぼ日手帳のために開発された手帳用紙であるかのように錯覚してる人って。実際、「トモエリバー」で検索しても文具と紙業のサイトくらいしか出てこない。大半のほぼ日手帳のユーザーが本当は紙になんて興味ないのに、通ぶって知ってるふりをしてるだけなのだ。

それはそうと2024年版から、新しい製造元のトモエリバーが採用されるという。そして、その機会に紙の質が変わるため、2023年版には「おためし用紙」が付いてくる。実際に使ってみると、なるほど違う。2024年版は、ペンがするすると滑らない。また、あのネットリしたような、粘土に書いてるんじゃないかと思うような質感もなくなっている。ただ、新しい紙は文字の筆画を正確に書けるように感じられた。紙の中に何か均等に並んだ粒みたいなものが入ってるかのように思える紙質である。もちろん、どちらにも好き嫌いはあろうと思うが、僕はどちらもいいと思うし、僕のような人間にとってはどっちでも生産性や創造性は同じである。こう言っては気の毒だが、紙の質で左右されるていどの人間ではないからだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook