2021年11月21日に初出の投稿

Last modified: 2021-11-21

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僕は中学生の頃から授業のノートだろうと試験の答案用紙だろうと万年筆で書いていた。よって、試験で使ったときは、現在は既に退官している物理教師と問答になった。同じく、親友の一人は正仮名遣いの支持者で全ての答案に歴史的仮名遣いで回答していたため、これも教師と一悶着あったらしい。しかし、教師と生徒で議論した上で、どちらも結局は許容されるのが、おそらくは真の進学校というものなのだろう。これはこれで誇りとしてよい事例だと思う。しかし、そうは言っても鉛筆やシャープ・ペンシルを全く使わなかったわけではなく、状況に応じて使う場合もあった。そして上記の写真は、高校時代から35年くらい(やはり大人になってからでも万年筆やボールペンしか使わないので、そう使う頻度はないものの)愛用している2本だ。

まず上のペンは、三菱鉛筆の「PRO STAFF 0.5mm」で、調べてみると製図用として人気があったらしく、現在は新品だと1本が5,000円というプレミア付きだそうである。ちなみに、ボディの色が黒い 0.3mm のペンもあるらしく、"PRO STAFF" で検索すると圧倒的に 0.3mm のペンについて書いているページの方が多い。製図用なので、0.5mm の方が不人気だったのだろうか。ともあれ、このペンの紹介をすると、まず本体の真ん中に一部をくり抜いた部品が挟まっていて、それをスライドさせると芯の濃さを「HB」とか「2H」と切り替えて表示できるようになっている。もちろん、表示できる種別は 2HB, B, HB, F, H, 2H, 4H と、一般的に使われる範囲に限られている。それに、僕はこのギミックは殆ど使わなかった。1本で芯の濃さを変える必要を感じなかったし、何本も持っていないから、どれがどの濃さかを見分ける理由もなかったからである。記憶では、高校時代に使っていたシャープ・ペンシルの濃さは 2B が多かったと思う。幼い頃は鉛筆でも 2H などを使って薄い文字を書いていたが、これは何度か書いているように、小学校からの同級生だったO北M彦なる人物に「もっと濃くて大きな字を書いたほうがいい」と諭されてから、濃い芯やインクの筆記具を使うようになり、字も大きく書くようになって、小学校から中学校にかけては HR になると必ず板書をさせられるくらいの字を書くようになったわけである。

PRO STAFF は、確かにグリップもしっかりしていて、正確に線を引いたり文字を書くのに使いやすい。僕の手の大きさでも違和感のないバランスがあるし、写真でも分かるようにグリップの位置から芯の出ている先端までが 22mm と少し長くとってあるため、字を書いているときに何を書いているのかが自分で客観視できるという心理的な効果もある(この長さが短いと、グリップを握る自分の指が見えて微妙に気が散ることがあるようだ)。また、単純に先端が長いために周囲の文字を隠さないという利点は、製図のように縦横に任意の配置で文字を書くような使い方には最適だろう。但し、先端が細くて芯の出てくる箇所も細いので、丁寧に扱わないと先端が曲がってしまいやすい。

そして次に下の写真は、コクヨの「ミストラル」という製品だ。すぐ分かると思うが、サイドノック式と呼ばれるタイプのシャープ・ペンシルで、親指の第一関節でボディの境目をノックすると芯が出る。これもアンティークの店では4,000円くらいで今も売っているようだ。ただ、サイドノック式のシャープ・ペンシルはテレビでコマーシャルしていたほど売れたため、数がかなり出回っていたようだから、さほど珍しいものでもないのかもしれない。そして、現在でもコクヨからミストラルのブランドで後継となる商品が出ている。

このタイプを使うときに、多くの方が心配するのは、もちろん書き心地だろう。ペンの腹に力を加えて芯を出すのだから、もちろん文字を書いているときにペンのボディを強く握ると芯が出てしまうのではないかと感じるのは分かる。そして、書いているときに芯が出るような挙動が加わると、ちょうど芯をボディへ押し戻すときの動作と同じことになり、逆に自分で芯をボディへ押し戻してしまうのではないかと不安になるのも分かる。僕も、使い始めて暫くは同じような不安を持ちながら使っていた。しかし、それはペンの持ち方が悪いせいでそういう挙動になるのだと分かった。正しくペンを持っているときには、親指と人差指の先にのみ力が少しだけかかっていて、あとは親指と人差指の間の水掻き(母指内転筋という筋があるところだが、部位としての名称が調べても出てこない。手相占いだと「第一火星丘」と言うらしい)と中指でペンを支えるだけだ。正しいペンの持ち方と力の使い方をしている限り、ボディをノックしてしまうことはない。

しかし、逆に言えば、ペンを正しく握って適正な力の入れ方をしている状態では、サイドノック式のシャープ・ペンシルを皮肉にも簡単にノックできないのが難点だった。ノックするには、親指の先をボディに付けたまま、親指の第一関節を敢えてボディへ当てるように、親指を捻る必要があるのだ。慣れると問題はないけれど、指にとってあまりよい挙動ではないような気がして、PRO STAFF に比べると自然に使う頻度が落ちていった。そういうわけで、いまでも置いてあるにはあるが、高校時代に数年ほど使った覚えはあるものの、大人になってから手にとった記憶が殆どない。

もちろん、ただのノルタルジーという趣旨もあるにはあるが、ペンに限らず、30年以上も同じ性能で使い続けられる商品というのは、まず工業製品の設計や製造として称賛に値するし、こういうものこそ仕事の道具という気がする。スマートフォンやノート・パソコンなんて、個々の製品には色々な工夫や知恵や労力が注ぎ込まれているのは分かるとしても、やはり3年や5年で OS が対応しないの動作不良だのスペックが低いのと使い物にならなくなるというのは、仕事の道具という気がしない。よって、多くの人々がコンピュータというものにさほど興味も知識もスキルもないというのは、技術者として残念には思うが、分からなくもない。

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