Scribble at 2020-11-23 11:11:06 Last modified: 2020-11-23 11:16:49

雑に「コロナ禍」などと言っているが、特に産業全体の規模で事業継続に対するインパクトが大きい外食産業や旅行・観光・宿泊業や水商売や娯楽・イベント・スポーツ・演劇などと、それらに従事していて簡単に切り捨てられている「非正規」雇用の人々について、それぞれの事業者で事業を継続したり雇用を維持するための助成金とか、あるいは直接的な補助や貸付が国や地方公共団体や外郭団体や金融機関で実施されたり検討されている。これと COVID-19 に罹患していて入院したり身動きがとれなくなっている人々とを除けば、それ以外の多くの人々は多少の影響はあっても生活するにあたって重大な制約とか不利益を被っているわけではなく、したがって「ゴートゥー何とか」で歓楽事に使う費用が安くなったら、何の憂いもなくホイホイと家族で旅行してウイルスをバラ撒いたりもらってきたりしていると非難されているわけである。

歴史という観点から言って、戦争や災害や疫病の流行や新しい技術の普及など色々な理由で、それまで続いていた産業が衰退したり、あるいは極端に安く自動化されてコモディティーとなってしまう事例はあった。そして、それぞれの時代のテクノロジーを利用して実質的に同じサービスを提供する事業が復活することだってある。例えば江戸時代に普及していた事業として、時代劇でお馴染みの飛脚というものがあった。これは明治期に郵便制度が公的に敷かれて衰退してしまったが、再び宅配便として復活しており、宅配便も手掛けるロジスティック業界で、大手の一社が会社のロゴに飛脚のイラストを使っているのはご存じだろう。だが、もちろん時代の移り変わりによって完全に消失してしまう事業もある。僕も携わっていた事例としては、ワープロ入力業としてのタイピストだとか、写植工を指摘できる(古い機械を使って細々と事業を営んでいる人もいるだろうが、もはや「事業」とか「産業」と呼べるものではなかろう)。

もちろん、簡単に過去の事例を示して現在の状況にも当てはまるかどうかは分からないが、現在の状況に対応できない事業や産業が衰退する可能性はある。家の外で食事することが、人の生活スタイルとして当然でも自然でもないような状況を想像できないとしても、それ自体は論理的に矛盾しているわけでも何でもないのだから、一つの可能性として想定してもよい筈だし、特定のサービスや商材を売ることだけが目的で会社を興したような《メーカー志向の経営者》とは違って、《マーケティング志向の経営者》とはそういう可能性も考慮して事業を変えたり発展させたりするものである(もちろん両者を良し悪しの問題として区別しているわけではない)。よって、外食なりファストフードの事業者がデリバリー・サービスにシフトしていたりするのは一つの選択肢として何の疑問もないし、当然だろうと思うし、経営判断としては正しい。そして、そういう業態なり商圏の変化に追随できない事業者が市場から退場するのは、はっきり言えば自由主義社会の《自然法則》としか言いようがない。無能は事業を続けられないようにできているのであり、そうあるべきだというのが、市場原理の社会における《正義》や《公平》というものである。よって、救済措置は無能に下駄を履かせるようなものであってはいけない。この状況に対応しようとしない事業者を行政が救済する必要はないのである。そういう人々を救済するのは福祉のステージであって、産業規模に対する公的な補助とは別の問題だろう。

よって、僕は「ゴートゥー何とか」のようなバラマキ政策は全く支持しない。この状況で店を開けさえすればいいといった、ふざけたビジネス感覚の事業者を救済する必要はないのである。それに、大きな打撃を受けている事業者や雇止めされた人たちを、本当にそんな政策で救済できるのか、甚だ疑わしい。公称だけで7万人と言われる失職者を、こんな政策でどれだけ救済できるというのか。この機会に愚かな事業者を市場から追放して、この機会ですら新しくチャレンジしようという事業者を支援し、いま職を失っている人々に雇用の場を提供することも必要だろう。いくら日本が実質的には社会主義国だからといって、こんな状況でも国の持ち物であるかのように一律に事業者を保護するなどというのは、愚策もいいところだ。

(なお、こういうことを書くと、僕が日頃から「人でなし」とバカにしているリバタリアンと何が違うのかと疑問に思う人はいるかもしれない。簡単に言えば、僕は救済策や支援策とセットにして無能を切り捨てよと言っており、リバタリアンや維新のように切り捨てることそれ自体を目的にするような、市場原理に対する狂信者ではないということだ。)

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