Scribble at 2023-11-26 14:31:09 Last modified: 2023-11-27 07:41:03

中学生の頃に、日曜日の昼過ぎと言えば『マクロス』のようなアニメが放映されていたのだけれど、その前後には、何年か前にもご紹介したとおり、グラハム・カーの『世界の料理ショー』という番組が放映されていた。そして、その番組は好きでよく観ていたのだけれど、一つだけ気になっていたのは、グラハム・カーが豪華な腕時計や指輪をして食材や食器を扱ったり料理を盛り付ける場面だった。僕はいまでも、調理師免許を持っているであろう人物がワイドショー番組などで腕時計や指輪をして作業する様子を目にすると、何ほどか違和感を覚える。

一般論として言うと、家庭で料理するときにも(いまどき腕時計をしているひとは極端に少ないだろうが)指輪は可能な限り外した方がいいとは思う。理由は幾つか考えられるが、まず第一に、不衛生である。手を洗ってタオルなどで丁寧に拭いても、指輪の裏側までは水が落ちないし拭けたりもしない。明らかに衛生管理という点だけでも不真面目な態度であることは事実だろう。そして第二に、これは特に僕もガラス製品を洗うときに感じることだが、食器の扱いを誤ると指輪で食器を割ってしまう恐れがあるからだ。丼の底が指輪にカチンと当たったときには、さすがに冷や汗をかくこともある。

こうしてみると、ワイドショー番組などに登場する「有名シェフ」の類が指輪を外さずに調理するのは、要するに彼らは食器を洗ったりしない立場なので、指輪が食器に当たるという心配をしなくていいからなのかもしれない。ということは、彼らは「料理」というトータルな作業をしないという前提で食材や食器に接していることになるのだから、高い技量をもつ何らかの意味での芸術家なのかもしれないが、僕は少なくともそういう人たちを「料理人」とは呼べない。料理とは、それこそ食材の仕入れから皿洗いや室内の清掃までを含める体系立った作業プロセスのことだからである。キャベツを切るだけとか、アイスクリームをデコるだけとか、それはそれで特別な技量を要するのではあろう。でも、それは飽くまでも「調理」であって、「料理」ではない。

同じことは、システム開発でも言える。コンピュータ・サイエンス関連の学科を出たはいいが、ソフトウェア・エンジニアリングや要求開発やトラヒック理論しか知らず、C++ や Java のコードを殆ど書けないような IT ゼネコンのプロマネなどは、どういう国際的なマネジメント資格を持っていて僕らの数倍の給料を富士通の子会社やアクセンチュアで(その原資は僕らの税金なのだが)もらってクズみたいなシステムを官公庁や銀行へ納品していようと、彼らを「プログラマ」だの「エンジニア」だのと呼ぶのは間違いである。もちろん、それは「プログラマの方が偉いのに、彼らが或る種の僭称を犯している」からだ、などと言いたいためではなく、彼らの無自覚や無頓着や無理解を正すためなのである。

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