Scribble at 2024-06-12 12:29:09 Last modified: 2024-06-12 17:30:16

会社の業務マシンは Ryzen 7 2700 (3.2GHz-4.1GHz/8コア/16スレッド), メモリ: 16GB DDR4, グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1060 6GB, ストレージ: 238GB INTEL SSDSC2KW256G8 (SATA (SSD)), 931GB TOSHIBA DT01ACA100 (SATA), 931GB TOSHIBA DT01ACA100 (SATA) といったスペックで、以前はこのマシンでも Stable Diffusion Web UI を動かしてみたことがあった。ただ、このスペックではグラフィック・カードが古すぎて、1枚あたりの出力に何分もかかってしまうため、実用性はない。

ということで、前に出社したときの空き時間に ComfyUI を代わりに入れてみたのだが、どういうわけかこれは起動すらしない。こちらの方が低スペックでも動くという宣伝文句が多いわけだが、色々と環境変数あるいはコマンドラインのオプションなどで指定しないといけないのだろう。

ComfyUI でも Stable Diffusion でも、生成 AI をローカル・マシンで動作させるためには、やはり大量の計算資源が求められる。簡単に言えばパスワード解析と同じように、高度な計算だけに特化したデバイスとしてのグラフィック・カードが必要であり、それがデータを復号するためなのか、大量の文章を翻訳するためなのか、それとも良い子のみんながエッチな画像を生成するためなのかは知らんが、ともかく特定のデバイスに大きな負荷がかかるわけで、これをサポートできないマシンでは動かせないわけである。

しかし、生成 AI に関する初心者向けのコンテンツを公開しているサイトやブログの多くは、アフィリエイトが目的ならなおさら、とにかくやたらとハイスペックで高額なグラフィック・カードやパソコンを買えと推奨しており、僕は好ましくないことだと思っている。そのためだけにパソコンを買うような余裕があるならともかく、たいていの人々にとって、パソコンというものは生成 AI だけのために購入するものではない。そもそも昨今はプライベートなパソコンそのものを持っていなくても仕事をしている人も増えていて、パソコンはあくまでも会社の業務用マシンだという感覚で、自宅で仕事をするときは、会議であろうと文書の作成であろうと、タブレットやスマートフォンだけで足りるという人もいる。

そのようにハイスペックなマシンを仕事だけではなく他の理由でも既に所有しているか、買い替えるだけの動機や事情がある人の多くは、ほぼパソコンで高画質のゲームをプレイする人口と重なっている。よって、複数台を使うわけでもない限り、ゲームしているあいだは生成 AI など使えないので、意外とローカルの環境で生成 AI を頻繁に使っている人というのは、パソコン会社が言うほど多くないと思う。そして、一昨年の Stable Diffusion 1.0 のリリースから2年くらい経過した現在の状況を見るに、おおよそ使う気がある人は既に使い始めており、新規参入するユーザの爆発的な増加傾向は一段落したと言えるだろう。これは、たとえば low-rank adaptation (LoRA) という構造を使って、特定のキャラクターや風景や物体を描画できるように再調整する、safetensor という形式のデータを投稿・公開する Civitai.com のような有名サイトで新規に登録されるデータを眺めていても、何となく分かる。なので、わざわざゲーマーでもないのにハイスペックなマシンを買ってまで(買い替えてまで)生成 AI をローカルで動かしたいという人は、既に昨年くらいまでに導入しているだろう。もちろん初心者というものは常に存在するし、これからも新しく加わるのだから、ローカル環境で生成 AI を使うための指南は必要だと思うのだが、感覚のズレたことを書いているページがやたらと多いのには、やや辟易させられる。

特に、クリエイターというよりもパソコンおたくの書いている文章には、はっきり言って常識外れなものが散見できる。たとえば、業務用のワークステーションにしか採用されないスペックのグラフィック・カードを、単に最高性能ではないというだけで「低スペック」などと書いてみたり、どれほど FX や親の財産といった泡銭で強力なマシンを持っているのかは知らないが、いくらオタクでも少しは常識的な金銭感覚をもって他人に文章を公開するべきだと思う。常識的には、大半の家庭で使っているエントリー・レベルのパソコンなんてものは、YouTube や NetFlix の動画を眺めたり MS Office のアプリケーションが使えたらいいのだから、そもそもグラフィック・カードなんて載っていない、内蔵 GPU の CPU が搭載されたモデルが大半だろう。よって、専用のグラフィック・カードが搭載されたパソコンをもっているという時点で、ゲーマーや自営業者のデザイナーやら、ともかく一般的な用途でパソコンを使っている人とは違うのだ。したがって、もし一般人向けに生成 AI の利用を薦めるなら、その用途が仕事用にテキストを出力するためであれ、あるいは趣味として画像や動画を出力するためであれ、ハイ・スペックかどうかなどというオタク基準で話をするのではなく、専用のグラフィック・カードというものが必要になるというところから解説するべきなのである。

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