Scribble at 2020-09-11 07:29:08 Last modified: 2020-09-11 10:35:36

神奈川県が、独自の健康増進政策を進めるために必要だとして、2016年からスイス・ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部に派遣した女性技幹(46)が自己都合で退職し、WHOに転職した。県は女性の給与負担などで計1億円超を支出してきたが、目に見える成果は乏しく、「いずれは県に戻り、WHOで得た最新の知見を還元してもらう」という計画も頓挫した。県議会では当初から、派遣の効果に懐疑的な見方があり、それでも推し進めた県の責任が問われそうだ。(佐藤竜一)

県が1億円超支出してWHOに派遣の職員、自己都合で退職し転職

書きっぷりが、いかにも「女性医師の、実質的には留学か転職の費用を税金で肩代わりさせられた」みたいな論調だけど、こんなことは private sector だろうと public sector だろうと起きることであり、派遣した際に一か月か四半期ごとの成果をレポートさせるといった方法で、少しずつ成果を引き出していくという工夫が足りないのだと思う。遠方で派遣した人間が現地で別の組織に転職するなんてことは、この記事が示唆しようとしてるような裏切りみたいな動機があろうとなかろうとありうる。都道府県の自治体から他の主要都市に置いてある事務所(山口県の大阪事務所とか、広島県の東京事務所など)の担当として送った人物が、そちらの主要都市で転職先を見つけて退職するなんてことは幾らでもある。

要するに、職業選択の自由という小学生でも知ってる大原則を政治家や役人が理解していない証拠だ。そして、配置した人材が辞めてしまうリスクを想定することは、組織においては当たり前のことである。多くの企業でも、たとえば試用期間の3カ月という短い期間ですら自社のリソースを使い物になるかどうかも分からない小僧どもに費やすわけで、試用期間の後に本人の意思で退職してしまう数多くの事例を「裏切り」だの何のと言っていてはきりがないのだ。したがって、こういうことは、ただ一度、そしてただ一人の事例でどうこう言っても仕方がないわけで、遠方に派遣する際に成果をフィードバックしてもらう効果的な方法を探りながら(もちろん正当に費用を捻出する余裕があればの話だが)繰り返す他はない。それが投資というものだ。

なお、連れから質問されたので追記しておくと、看護師のいわゆる「御礼奉公」のような制度は有期雇用契約としての3年を上限とする一般的な労働契約とも言えるが、その条件が看護学校の奨学金を肩代わりするというものであるため、実質的には借金の返済である。簡単に言えば「マグロ漁船」のネタをガチでやってるようなものだ。したがって、現実には看護学校へ通わないと独学だけでは国家試験に合格するのが難しい(実地研修なんて病院に付属してる看護学校でしかできない)ため、最初から選択の余地がないという有利な地位を利用しているとも言えるわけで、世の中にはこういう制度が当然だとか「当人が承諾した契約だから」などと、イケメンイラストをちりばめて解説している看護師専用の転職サイトなどもあるようだが、そういう業界クンの無知無教養な解説ばかり読んでいると、自称プロとしては狭い業界のノウハウを色々と蓄えられて有利ではあるかもしれないが、社会人としては腐っていくので注意したい。

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