Scribble at 2022-08-22 10:37:48 Last modified: 2022-08-24 07:56:51

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50歳からの科学的「筋肉トレーニング」 若いときとは違う体をどう鍛えるか

「はじめに」を読み始めると即座に引っかかる言い回しが何度も出てくるので予想はしてたけど、この本って完全に中年「男性」しか考慮してないんだな。著者はジュリウス・フィンクという業績不明のドイツ人で、日本に留学していたからか本人が日本語で文章を書いているらしい。そういうマスコミ的な興味本位で著者に選ばれたのだろう(そもそも、日本の出版社に業績を評価したうえで著者を選定できる編集者なんているのかという根本的な疑問はあるが)、「国葬」マンセーな講談社のブルーバックスを手にする読者としてネトウヨ科学オタクという前提があれば、かような本でも平気で出せるというものだろう。女性の体力や身体や QOL はどうでもいいのかよ。(もちろん、かような批評を押し広げると「若者の QOL はどうでもいいのかよ」などと幾らでも言えるわけだが、少なくとも書名で性別は無関係に見える書き方をしていながら男性しか考慮していないというのは、僕には不適切に思える。)

内容については、理屈の点ではかなり丁寧に書かれていて、さすがに脳筋の元スポーツ選手が修士号ていどを取っただけで書いたようなゴミ同然のトレーニング本とは水準が違う。たいていの筋トレ本は、トレーニングの仕方について器具やスケジュールに偏っていることが多い。ようやく最近になって生活習慣だとか運動生理学の知見も含めた内容の本が出始めているけれど、依然として筋トレと言えば NHK に出てくる筋肉バカの大学教員や俳優で知られるような、ただたんに筋肉さえ体につけばいいというナルシストのお遊びでしかない。しかし、その点で本書は筋トレというトレーニングだけではなく、生理学、それから食事や睡眠など生活習慣全般の話題を適切に取り入れている。また、具体的な話題でも、粉プロティンは非効率でプロのアスリートは使わないとか、コンビニ弁当は大半が有害で筋肉どころか健康にも悪いとか、睡眠時間を削るくらいなら筋トレを休むべきだとか、筋トレや筋肉さえつけたらそれでいいという盲目的な筋肉バカにならないようなスタイルを推奨している。

しかし後半の具体的なトレーニングについては首を傾げる内容が多い。特に、自宅で特別な器具なしでやれるトレーニングは数種類だけで、あとは月額の会費が何万円もかかるようなフィットネス・ジムにしか置いてないような大型のバーベルや専用器具などを使うことが想定されている。こんなのは詐欺まがいの営業代理店の社長とか、ホストとか、芸能人とか、キャバ嬢のマンションから朝帰りの途中に立ち寄る国家官僚とか、年収1,000万円と言われる講談社の編集者とか、そういう連中しか使わないだろう。

ちなみにだが、著者の氏名は "Julius Fink" を「フィンク・ジュリウス」と表記している。これは本人が敢えて自分で日本式の順番で表記してくれと要求したのか、それともここ最近になってネトウヨ度がたかまってきた講談社で一部の編集者による独走なのか。

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