Scribble at 2023-05-16 09:38:37 Last modified: 2023-05-16 09:48:17

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ベクター画像に変換できるオンラインツール

このところ、ラスターの画像ファイルをベクター形式のファイルに変換するサービスがたくさん出てきている。典型的な事例で言えば、大昔に制作された小さなサイズの JPEG 画像としてしか残っていないロゴ・マークやイラストを SVG に変換するという使い方ができる。SVG は写真やイラストといった画像をテキストで扱うものだ。もともとデジタル・ファイルはバイナリ・データの集合にすぎないし、しょせん「テキスト」と言っているファイルもバイナリのデータには違いない(プログラムとか写真のファイルとは違う「テキスト」なるものがコンピュータに実体として格納されているわけではない)のだが、JPEG や PNG や WEBP のようなファイルは画像の表示サイズを変えると解像度が追随しないので見栄えは粗くなったり潰れてしまったりするが、ベクター形式で扱う SVG のようなフォーマットだと表示サイズを変えても解像度が追随して細かくなったり粗く調整されるため(これはもちろん WWW ブラウザがやることだ)、ロゴ・マークを大きく表示しても「ジャギー」と呼ばれる外縁のギザギザがない・・・なんてことを、まさか当サイトをご覧の方に説明する必要があるとは思えないが、いちおう書いておく。

で、そういう変換サービスを紹介するコタツ記事もたくさん出ているのも、ご承知だろう(既に「キュレーション」なんて言葉は死語に近いが、もともとそんな素養を持っていた人間など殆どいなかったわけで、イカサマのマーケティング用語が一つ消えただけのことだ。ちなみに、マーケティング用語にもまともなものがあるのは、デジタル広告業界の末席を汚している身でもあるから知っている)。ただ、上記のようなページは、僕に言わせれば非常に悪質で不誠実なものだと思う。この ferret というサイトはマーケティング屋を対象としたサイトなので、最初から自分どころか他人の個人情報なんて屁とも思っていない人間のクズが相手のサイトなのだろう。よって、利用先で何が起きようと全ては「アクセス・アップ」だの「コンバージョン」だのに貢献すればいいわけである。

ともあれ、このページが不誠実だと思う理由は、これらのオンライン・サービスの中には先に画像をアプロードさせておいて、いざ変換しようとすれば個人情報を要求するものがあるからだ。名前やメール・アドレスなど一連の情報を入力したり、それを通じてサイトにユーザ登録しない限り、変換したファイルをダウンロードできないようになっていて、結局は個人情報とのバーター取引であって実質的には「有償サービス」(金銭を要求するわけではないから「有料」ではないのだろう)なのだ。でも、こうした紹介記事には一言も書かれていないため、使ってみないと有償かどうか全く分からない。サービス・サイトでも、敢えて最初から有償であることを隠しているからだ。

ともあれ、当然だが個人情報なんて入力したりユーザ登録するつもりなんてないが、既にファイルをアップロードしてしまっている以上は、相手のサーバに一時的なデータとして格納されている筈である。こういう知識を簡単にでも持っている方であれば、当然だがそういう一時的なデータは「人質」のようなものだと感じられるかもしれない。個人情報を入力するか、あるいはデータを勝手によく分からない用途に流用されるリスクを冒すか(いまなら画像を生成する AI の「餌」になるかもしれない)という不安を抱えたまま、サービスの利用を諦めるか、あるいは個人情報を入力したとしても、そんなことを後から要求する運営会社なのだから結局は何をやるか分かったものではないと不安のまま使い続けることになるのかもしれない。

言っておくが、ウェブのコンテンツはアクセスした人に初回の記憶を訂正してもらうという意味で作り直しできるものではない。いったんユーザに疑心暗鬼を起こさせたらリカバリーは殆ど不可能である。セカンド・チャンスが殆どないという意味では、旧来の新聞や雑誌のような印刷媒体と実は同じなのである。ウェブ・ページの記載に間違いを見つけたら、即座に修正できる。それは事実だが、間違った記載を読んだユーザが再び同じウェブ・ページにアクセスして再び記事を読んでくれるなどという、致命的に愚かな前提でコンテンツを修正するのは、全くの無意味である。これは僕らが携わる学術研究にすら言えることだ。カントの専門的な研究者でもない哲学の研究者が、いちいち新しい翻訳が出たからといって、日本で両手の指を越える数が出版されている『純粋理性批判』の翻訳を次々と全て読むなんてことは、断じてありえない(もちろん、新訳版や改訳版が旧訳版よりも「正しい」とは限らないのだが)。

そして、これだけではなく、上記の記事で紹介されている変換サービスの中には(いちおう全て使ってみた)、Vector Magic のように有償どころか金銭を要求するものがある。こういうことをあらかじめ読む人に伝えないなんて、恥知らずもいいところだ・・・と憤慨したところで、この落書きを書き始めたときには、こんなページに冷やかしですらアクセスしてもらいたくなかったので URL は紹介しないつもりだったが、やはり URL を添付して晒上げにしておこう。

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