Scribble at 2021-05-30 18:00:57 Last modified: 2021-05-30 18:08:11

英語の勉強には昔から幾つもの迷信があって、それらの多くは「丘水練」しかやっていない日本の英語教師が思い込みで良かれと思うことを生徒に勝手に勧めているに過ぎないものである。

その一つが、FEN のようなアメリカのラジオ番組を聞き流していれば良いというものだ。実際には、こんなことを何十年と続けても、絶対に英語なんて喋ったり書いたり読んだり聞けるようにはならない。赤ん坊ですら切実な生存という目的なり欲求があって言葉を習得しようとするのに、目的もなければ学ぼうともしない大人が英語を習得できるようなどなるわけがない(同じ理屈で、かなり前に「睡眠学習」というニセ科学の話をしたこともある)。ただの音声を聞くだけで、英語で生活したり仕事ができるようにはならないのだ。FEN や CNN を聞いて習得したという人もいるにはいるが、そういう人々が習得した状況を詳しく調べると、その大半は他のことをやっていての成果があったにすぎず、同時に英語のラジオ放送を聞いていたという事実は、英語を習得するということについて correlation が成立していたにすぎない。そして、現実に英語を習得して使っている人々の多くは何十年も前からとっくにこんな事実は弁えているのだが、学校教員(もちろん読み物の英語しか知らないような大学教授も含む)の方に僅かながら無根拠でも権威があったために説得力を勝ち得なかったのである。

しかし、現在の生徒は教員の権威など根拠がない限りは信用しない。補助教員として参加するアメリカ人と普通に会話している姿を見せているなら説得力もあろうが、研究社の辞書を片手にラッセルの散文を(僕らからすれば奇妙な発音で)朗々と読んでいるだけの人物には、もはや権威などないのだ。これは、僕は良いことだと思う。教員にとっては非常に過酷な話ではあるけれど、そもそも学卒ていどで他人に知識や技能を教育できると思い上がっている、実質的に国民の教養に対する〈下方圧力〉を加え続けてきた文科省の姿勢にこそ問題があったのだ。

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