Scribble at 2022-04-21 15:25:53 Last modified: 2022-04-21 21:50:59

原告側は訴訟で、遺骨が子孫や地域住民の許可を得ず「盗掘された」と主張。祖先を 祭祀さいし する権利が侵害されたと訴えていた。一方、京大側は「必要な手続きを経て人骨収集した」と反論。遺骨と原告側の関係性が不明確で「原告側には遺骨の返還を請求する権利がない」としていた。

京大人類学者が墓から収集した「琉球人」遺骨、子孫とされる男女らの返還請求を棄却

法律の話としてはここまでで、もちろん「盗掘」かどうかも不明ではある。だが、このような事例は他にも北海道でアイヌ人の遺骨を勝手に持ち去ったとして北海道大学を非難する「哲学者」もいたりする。

僕は、考古学では森浩一という先生を師事していたのだが、彼はこういうことに冷徹だった。つまり、遺骨は少なくとも〈当人〉のものであり、当の主体が死んだ後に自分でどうこうできるわけではないにせよ、他人だって勝手にどうこうできるとは限らない。遺跡から出土した人骨はどういう考古学の理屈があろうと誰か或る人物の遺骨であって、いやしくも考古学者が学者であるよりも前に人であるなら、他人の遺骨を軽々しく扱うべきでないことは自明である。

なお、遺骨とは別だが考古学の話題を紹介したので書いておくと、古墳は一にも二にも他人様の墓であって、文化財だろうと金銀財宝が出ていようと他人がむやみに掘り返したり、いい加減な理屈だけで誰それの墓だなどと言うものではないというわけである。彼がいわゆる「天皇陵」の多くを地域名で呼んでいたのは、別に左翼だからではない(彼が『赤旗』に多く寄稿していたのは事実だが、そんな理由であれば、およそ左翼とは言い難い僕が師事するわけない)。証拠もなしに墓を特定の人物のものだと言うのは単純に非科学的であるし、そもそも間違っていたら、それこそ皇族の祖先に対して不敬というものであろう。

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