Scribble at 2022-03-28 12:31:31 Last modified: 2022-03-28 12:44:18

「勉強法」とか「自習のメソッド」とか「独学術」などというタイトルで、多くの本が世の中に出ている。そして、実際にいくつか読んでいる人はわかっていると思うが、これらは手を変え品を変えて、結局は同じことを繰り返して書いているにすぎない。新しい本に違う(そして、何か新しく決定的な)ことが書かれているように錯覚するのは、そう自分が期待してしまう動機づけがあるからに他ならない。まさか自分が、逸話だけ挿げ替えたような同じ本を何度も買って読むほどのバカではないと思いたいのはわかるが、実績を残さない凡人とはそういう人のことだ。そんな本を、いつか「本物」に出会うはずだとばかりに何度も買って読むこと自体が、既に暇潰しにしか関心を持たなくなっている証拠である。そして、良い本が見つからないということを言い訳に、いつまでも勉強や訓練を始めようとしないわけである(*)。

そういう本に書かれているポイントの大半は、ごちゃごちゃと勉強を始めるための準備運動や言い訳を求める暇があったら即座にやれということや、雑事を抱え込まないこと(関連する類書をいくつも読むのは無駄であり、そんなのは他人を系統立てて説得する責任があるプロパーがやればいいことだ)(**)、そして継続・反復することの利点を強調するのみである。中でも、既に言い古された感があるけれど、「やるなら、今でしょ」というのが最大のポイントだと思う。大きな業績や実績でなくてもいいのだが、少なくとも自分で納得できるていどの成果を上げられない人の大半は、つまるところ英語の勉強だろうとダイエットだろうと、初めてもいないのだ。それでは成果など出せるわけがないのである。

これは僕も何年か前に、何度かの禁煙をした後で経験したことでもある。つまり、喫煙をやめるための最速・最善の方法は、喫煙しないことなのだ。これは身も蓋もない、当たり前のことを言っているようだが、タバコを手に取る動作を必要だと感じるたびに心の中で単に(理由もなく、それこそ機械的に)キャンセルすればいいのであり、そのために肺癌となった身体の写真を見たり、肺癌や心臓病で亡くなる人の話を読む必要などない。そのうち、タバコつまり喫煙する習慣そのものが自分になかったかのような生活になってしまう。それまでに身体へ蓄積した影響を生化学的に無くしてしまうことはできないが、生活習慣や心理という点では、もう僕は喫煙しなくなって5年以上は経つが、全く問題なく暮らしている。そして、強調しておきたいのは、僕はタバコを無理に吸わないように努力などしていないということである。もし自分や他人の健康への悪影響が全くないタバコが開発でもされて、非常に低価格で発売されたら、もしかすると再び吸うかもしれない。つまり、吸おうと思えばいつでも吸えるのだが、自分の生活にとってタバコを吸うという選択肢がなくなっているだけなのである。そうしたアイデアを会社からの帰り道に公園を歩いているときに思いついて、「なるほど、そうだな」と思い当たり、それから即座に何の準備も正当化も言い訳も下調べも「禁煙宣言」もなく息を吸うように始めただけのことであった。

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* いつまでも蔵書を読み始めない積読に一定の「インデックス効果」と呼ぶべき僅かな効果があるのは知っているが、しかし積読の僅かな効用だけで他人に推奨するほどの業績など上げられるわけがないのである。それと同じで、勉強法をあれこれと調べたり身に着けたところで、実際に学ばなければ、悪い意味で言う「評論家」でしかない。

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** 特にテキストや参考書について、同じような本をいくつも読まないと「知識が偏る」などと脅迫観念みたいなことを言う者の大半は、実は業績など全くないオタクにすぎない。その分野のあらゆる蘊蓄なり情報を記憶することが知識の習得や学問だと勘違いしている素人の偏見にすぎないのだ。既に何日か前に書いた通り、東大や京大にストレートで合格して国家官僚や医者や学者になっている同級生の多くは、極端な例では参考書や副読本すら全く使わずに教科書を何十回と通読するだけで、そこから自分の疑問とか不足している情報を自力で調べたり考えて解決し、実質的に受験の設問を自分で作って解くような作業を何回も繰り返していた様子を傍から見て知っている。逆に、勉強のできないやつ(とは言っても偏差値60ていどはあるが)に限って毎月のように新しい問題集や参考書をあれこれと買って、色々なタイプの問題に対応できなければいけないという脅迫観念に追われる。しかし、そんなことは勉強だろうと学問だろうと〈すべての問題〉とか〈すべての設問(解法)パターン〉など出版されてもいなければ、想像することも不可能である。逆に、そういうパターンをあらかじめ知らなければ問題を解けないという事実こそ、英語だろうと数学だろうと日本史だろうと適正に学んでいない証拠であろう。

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