Scribble at 2023-03-12 08:41:22 Last modified: 2023-03-12 08:46:06

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このところ自宅でネットワーク接続が途切れるようになってきていている。自宅の周辺にタワー・マンションが増えてきて NURO を使う家庭が多くなってきたからなのだろうか。新しい接続サービスは、シェアを伸ばし始めた頃なら空いているので、家庭に届くラスト・ワン・マイルの処理能力は同じでも NX までの中継施設の能力は十分にあるとは思うが、利用者が増えてくると遅かれ早かれ処理能力(利用者が増えても回線のスピードそのものは落ちたりしない。限界に達するのは、通信を中継する機器が大量のリクエストやレスポンスを一度に処理する能力だ)が限界となる。「ネットが遅い」という言い方は、データの通信速度が遅くなるのではなく、中継器の処理が追い付かなくなって、伝送の速度は同じでも次の機器までに処理を送り出す順番待ちが長くなるということにすぎない。したがって、「レイテンシ」というものも、その実質は光ケーブルの中をデジタル化された電磁波が伝播してゆくのにかかる所要時間のことではない。

ケーブルの中を伝うデジタル化された電磁波の速さは、もちろん真空中の光よりも遅いわけだが、秒速で20万キロメートルは出るとされている。すると、おおよそ1秒間で地球を5周するわけだから、大阪から東京までであろうと、大阪からウクライナまでであろうと、ケーブル1本で結んでいると仮定すれば、人間の感覚としてどちらが遅いとか速いという差は感じない筈である。時間がかかる原因は、途中の経路にある中継器の数とスペックに応じて通信データの処理能力が違うからだ。極端なことを言えば、中継器が1秒間で一つの通信につき1パケットしか処理できないところへ同時に二つのリクエストが5パケットを送ってきたら、1パケットずつ切り替えてゆけば、ユーザが一人しかいなくて一つの通信なら5秒で済むところを、両方を処理し終えるのに10秒かかることになる。つまり、1パケットずつ二つのリクエストを切り替えながら処理して同時に二つのリクエストを処理したかのような体裁にするインチキ並列処理である。実は現行のコンピュータのタスク管理は全てこういうインチキであって、本当の並列処理なんて実はできないのである。これは OS の設計だけでなく、コンピュータの CPU を設計するときにも当てはまる原理的な話であって、そもそも何についての並列処理なのかという点で何らかの単一の発端なり制御機構がない限り、もしも完全に並列化されてバラバラに処理されるような仕組みがあったら、それを何か一つの目的について並列に処理させたり、処理の結果を同じ目的の異なる並列処理から得た結果として再び一つの目的に即してまとめることは不可能であろう。どこかにそういう単一の機構がある限り、改札口が一つしかない駅と同じく、サラリーマンの歩く速さが常に同じでも順番待ちになれば滞留が起きるわけである。

よって、プロバイダに文句を言っても、彼らは自宅に届く回線の最終の分岐点から計った速度(ここはあなたの通信データしか通っていないので、工事や設置機器に問題ない限りスピードや処理能力が落ちるわけはない)でしか判断しない。そこから NX までの処理能力は、契約世帯が増えてきたら処理の順番待ちが必ず起きるため、いわゆる「ベスト・エフォート」という最初に交わしている筈の契約によって、たいていは何も対応したり改善してもらえないわけである。要は、回線のスピードに問題が無くても、処理が混んでいるのは、契約者が互いに中継機器の能力を奪い合っているからであり、それはお互い様というわけである。

とかなんとか自分に言い聞かせてみたところで、不満が解消されるわけではない。そもそも中継機器ごとに世帯数に応じてラスト・ワン・マイルの回線を分岐させる「分割数」というものがあって、NTTDATA など主だったプロバイダは1台の中継機器で30前後の世帯に分割することが多く、某 J:COM のような悪評がある会社は非公開なので、はっきり言えば100以上の世帯に分割していると言われている。回線の速度に問題が無くても、通信が途切れてしまってまともにネット・ゲームできない回線だと大昔から言われている原因は、実は回線の規格がケーブル・テレビ用のものであって古いとかいった理由だけではなく、中継器に処理させる回線数が多すぎるという点にもある。でも、NURO が J:COM よりも少ない回線で分岐させている保証なんてないわけで、関西でのサービスが始まった5年くらい前ならともかく、いまではゲームのプレイヤーが Twitter などで書いているように、サービスが始まった頃の性能から相当に落ちていると言われることが増えているけれど、単純に利用する世帯が多くて機器が対応できる能力の限界に近くなってくると、パフォーマンスが落ちるのは当然であろう。民生サービスなんてものは、機器の限界まできても安定したパフォーマンスを維持するような余裕のあるスペックで機器を製造したり、設置したりなんてしていない。

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