Scribble at 2023-03-04 10:52:57 Last modified: 2023-03-04 11:57:01

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ぶっくいん高知 古書部から送ってもらった『景仰』が四冊、昨日の夕方に到着した。鹿持雅澄先生景仰会が発行する『景仰』という会報を合冊にしたものである。当然だが会員の方は合冊になる前の会報を配布されて手にしているであろうから、合冊の冊子を別に購入して所持している人が会員の他にどれだけいるのか分からないが、当時の会員(企業の chief privacy officer としては微妙な気分だが、住所の記載された名簿が掲載されている)が120名弱であるから、顧問や事務方の人員も含めて150人に満たない規模の団体と言って良い。仮に全員が合冊の『景仰』を所持していたと仮定して、更に全国の研究者に配布したり、あるいは会員が知り合いの好事家に贈呈する目的で複数の冊子を購入するとか、あり得る仮定を加えたとしても、この合冊本は多く見積もっても200部ていどの発行だったのではないか(会計報告が記載されていれば、印刷代の合計金額だけでも部数を推定できるのだが)。

この団体は半期で3,000円という会費を集めていたようなので、年間で6,000円の会費が約120名分だから基本的な運営費は720,000円であった。冊子については、発行し始めた頃はプリンターの解像度が低いワープロで直に版下を作っていたようだが、後になると各ページの柱(ページの上部に記載される、各章のタイトルや冊子の題名など)も活字体になっているので、それなりに版下にも手をかけていたのであろう。事務方にワープロのオペレータがいるとしても、会員の構成から見て中年以上の方であろうし、工数が持ち出しというのも考えにくいため、作業のコストを考えあわせる必要がある。会報は毎月の発行で、分量は平均すると15ページ前後だった。さきほどの仮定から200部をコピーして郵送するとして、コピーと封筒と切手で合計300円はかかるだろう。ということは・・・300円 x 200名 x 12か月だと、ちょうど720,000円で会費の収入と同じだけかかることになる。計算上は奇麗な(差し引きゼロの)P/L になるが、もしそうなら合冊本を発行する費用が全くない。

もちろん、この仕掛けは(まぁ多くのベンチャー企業にも言えることだが)、事務方の工数が持ち出しだったり(僕も長らく、ダンピングのためにプログラミングの費用やサーバ運営の費用がゼロであるかのような見積書に埋もれて、みなさんも知ってるような巨大企業のウェブサイトで使うサーバを構築したり、メンテナンスしてきたわけだが)、あるいは寄付金なり不足分をサポートする出費があったりしたのだろう。それから、この団体の事務局は高知県文教会館に置かれていたため、合本については文化事業として何らかの助成があったのかもしれない。

なお、合冊本は第52号(平成8=1996年12月号)で終わっているのだけれど、この鹿持雅澄先生景仰会という団体の運営状況は記録も情報もオンラインに存在しないため、よく分からない。第52号の編集後記には景仰会が主催する次の催し物について告知が掲載されているので、この後も団体の運営は続いたのであろう。このあたりについても、携わる人々の大半が高齢者と思われるため、ネットに多くの情報が掲載されることは今後も考えにくいので、やはり合冊本を買える限り手に入れておいて良かった(失礼ながら、これから第三者が手に入れようとしても、そのチャンスは所有者が亡くなった後の遺品整理くらいであろう)。もちろん、これを買い求めたのは学術的な資料や典拠として使うという理由ではなく、自分と同じ特定の話題やテーマや分野あるいは人物について関心を持つ人がいて、何を考えたり話していたのかを知るのは単純に興味深いからだ。それは、Facebook や Twitter で好きなラノベや映画やゲームやタレントの話をしている人々と何ら変わらないわけである。国学だの長歌だのは、もちろん多くの人にとって馴染みもなく取っ付きにくい話ではあるけれど、それは多くの人にとって BTS のようなタレントや『Phantasy Star Online 2』のようなゲームや、あるいは非鉄金属材料学や Kubernetes が縁遠い話であることと同じであろう。

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