Scribble at 2022-03-11 11:59:13 Last modified: unmodified
日本語では外国語の複数形で表現された名詞を単数で書き表す傾向があり、これは短絡化と言うよりも発音上の configuration であるとも言えるだろうが、とにかく紛らわしい場合があって困るので、複数であることを強調しないと唯一の何事かとか決定的な何事かであるかのように誤解を与える場合は、複数形で表すことにしている。この "human universals" にしても、複数あることを正確に言い表さないと、何かヒトにとって唯一の〈共通文化〉があるかのような誤解を与えてしまう。集合名詞として単数形の扱いをする場合でも、それはあくまで "the universals" という複数の表現を保ったままなのである。よって日本語でも「文化に共通してみられる諸特性」などのような、回りくどいが誤解を生じない表現を使いたい。
それはそうと、この表現は人類学者のドナルド・ブラウンが書いた "Human Universals" (1991) という著書で広まった言葉のようだが、この本、それから2002年に出た日本語訳すら現在は絶版になっていて、アマゾンでもプレミアがついている。どうも様子を見ている限りでは、この本から human universals のリストを作って掲載したスティーヴン・ピンカーの著作が後発として売れているため、ブラウンの著書はピンカーのベストセラー本に掻き消されてしまったらしい。とはいえ、いまでも検索すれば "human universals" というキーワードで論文は続々と出てくるため、アカデミックな脈絡では関心を集めているのだろう。