Scribble at 2022-03-11 11:38:06 Last modified: unmodified
相変わらず興味深い論説が多い永井氏のサイトだが、冒頭の議論はともかくとして本論に入ると奇妙な印象を覚える。たとえば中根千枝の『タテ社会の人間関係』やルース・ベネディクトの『菊と刀』や土居健郎の『「甘え」の構造』など、古典的というよりも社会心理学や文化人類学としてみても雑でばかばかしいエッセイの類を引き合いにして、家族制度としての子供だとか、青年にみられる恥の感覚という、ほとんどこじ付けのような理屈で日本の文化を「ネオテニー」だと論じる。ここには、単純な論点先取しかない。「青年の感覚や子供としての立場という幼い日本の文化には幼さがある」と言ってるだけだからだ。これは今更ながらに繰り返す必要もないとは思うが、もう「タテ社会」だの「恥と罪」だの「タコつぼ」だのと、それこそ未熟な人々や凡人やバカの理解力に最適化されただけの buzzword と言ってもいい雑な議論で社会や国や文化を語るのはやめようではないか。