Scribble at 2024-08-20 13:19:37 Last modified: 2024-08-21 18:57:25
The popular iPad design app has vowed against introducing generative AI tools into its products.
もちろん彼らの言っていることは正しい。第一に、生成 AI の分散モデルが、オンライン・コンテンツのスクレイピングという「窃盗」で得たデータによってトレーニングされた不正なデータであるという法的な意味において正しい。そして第二に、生成 AI によって出力される画像や音声や動画やテキストが、何にせよ「まともな生成データ」として評価されたり広告素材などとして採用されるにあたり、それを判断しているのが我々自身でしかありえない以上、生成 AI が自律的に「よさげなもの」を生成したりはしないし、また生成できもしないという原理的な意味においても正しい。
ちなみに、これは僕が日本で「ウェブ・スクレイピング」を純粋にコーディングの話題として出版している連中を非難してきた理由と同じ類の議論でもあるし、あの「岡崎市立中央図書館事件」に過剰反応してウェブ・スクレイピングを「権利」や「正義」であるかのように言い立てていた、馬鹿なプログラマや情報セキュリティの未熟な自称専門家どもに対する僕の批判的なスタンスとも同じ議論である。個々にオンラインのコンテンツをリクエストして閲覧したり利用することは問題ないが、プログラムによって大規模にコンテンツを人の判断と関係なしに無差別に収集するようなウェブ・スクレイピングは、条件によってはもちろん窃盗になりえるし、一つのウェブサイトに対する集中的なリクエストを実施している場合は、リクエストの回数や間隔がどうであれサーバ側にかかっている負荷によっては不正アクセスや業務妨害となりえる。岡崎市立中央図書館事件では、1秒間に1回のアクセスだったと言われているが、これは個々のリソースに対する UA の通信リクエストのことではなく、要するに生身のユーザとしてページを表示するという意味の単位であるため、実際にレスポンスするためにかかる処理はもっと多いわけである。HTML ファイルのペイロードをサーバから送出するだけで済むのではない。相手のサーバによっては、付随するウェブ・フォントや CSS, JavaScript などのファイルも含めて、1回のレスポンスで数メガバイトを送出する場合も多いわけで、1秒間に1回だから軽いだろうなどというのは技術を知らない素人の偏見や主観にすぎない。問題があるのは、こんな低レベルのネットワーク通信の知識すら知らずに、情報セキュリティやオンライン・プライバシーの専門家と称する連中(その多くが、例の「LINE学会」と言うべき情報法制学会のメンバーだ)がこぞって喚いていた事実だ。
僕が、日本の情報セキュリティやプライバシー法制の学者や物書きをあまり信用していないのは、こういうことにも理由がある。彼らは芸能レポーターと同じであり、自分たちが有利な立場で叩けるような人間や企業だけを叩いているにすぎない。あの高木浩光氏にしても、どこまで公正な立場でプライバシーや情報セキュリティを論じているのか、僕には強い疑問がある。まぁ、高木氏はここ10年くらいはアマチュアの法律学者みたいになってるので、技術や理念よりも国内の利害関係や人間関係の方が重要なのかもしれんがね。
とは言え、僕は生成 AI の利用価値があると思っているし、個人としても実際に使っている。僕は自分でイラストを描けないし、何らかの素材として写真を撮影するために、いちいち海外に旅行するお金も時間もない。それを生成 AI が出力する画像によって代用できるわけなので、これはこれで一つの利点と言って良い。いくら彼らクリエイターの才能に価値があるといっても、僕は会社で使う教材の挿絵としてイラストを使うにあたり、彼らクリエイターにそもそも1枚あたり数十万円の制作費用を出すことはできないのである。つまり、彼らクリエイターは生成 AI と戦っており、それはそれで理解できるが「理解できる」からといって、僕らは彼らに発注してイラストは描いてもらわない。生成 AI が使えないなら、これまでと同じく「いらすとや」のイラストを使うだけである。それでイラストレーターが何人も廃業したところで、実は僕らには何の関係もない。それが続いてイラストレーターという職業が成立しなくなっても、やはりどこかでイラストを描く人はいて、その人の作品を個別に買う人は買うだろうし、「いらすとや」のように無償で提供する人はいなくならないわけで、ただちに人類のクリエーティビティが零落したり消失するわけではない。