2022年02月25日に初出の投稿

Last modified: 2022-02-25

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The New York Times の Basic プランは1年間の「お試し購読」が先月で終わり、今月からは通常料金となる。それでも現在の為替レートで840円だから、新聞を購読するよりも格段に安い。日本国内の新聞はデジタル版だけのプランがないため、どこも4,000円近くの購読料金がかかる。もちろん海外のメディアと単純には比較できないとしても、正直なところ国内のメディアであっても、田舎で何の祭りをやってるだの、成人式でガキが暴れただの、しょーもないレベルの上場企業で社長が誰に交代したの、その大半は日本人としてすら「些事」としか言いようがない記事だ。確かに NYT にも、その手の「些事」はたくさんある。クロスワード・パズルや料理のレシピを単独で有料配信しているくらいの暇潰しをやっているメディアでもあるという事実は指摘できる。だが、public affairs として国際情勢や金融や人権あるいは技術とか科学の情報については、国の違いが関係ないという立場で眺めると、やはりメディアの購読料金が単純に安ければ(そして英語で読むのが苦痛でなければ)そちらを選ぶのが当たり前である。

よって、国内の新聞社を初めとするメディアが僕らのような消費者に振り向いてもらうには、少なくとも以下のような変化が必要だろう。

(1) デジタル版へ全面的に移行するか、もしくは単独のデジタル版の購読プランを低料金でつくる。

(2) デジタル版は購読料金をベースに運営し、広告を排除する。

(3) デジタル版には不合理としか言いようがない原稿の文字数制限という制約がないので、『天声人語』や『産経抄』のような埋め草記事、あるいは編集委員と称するアマチュアの社説を排除し、良質な記事を分量の制限なく何度でも長期に渡って掲載できるようにする。

(4) デジタル版には「入稿の締め切り」という制約がないので、所定の時刻に更新するコンテンツと、任意の時刻で更新するコンテンツを分けて、RSS や SNS での通知によりプレゼンスを確保する。

なお、これだけのことをやると、最初は人員を維持したり配信プラットフォームへの投資を回収するために、低料金で運営するのは難しいかもしれない。しかし、いずれにしても現在の新聞の購読料金よりも安い料金で事業を運営することは可能だと思う。なぜなら、(3) を徹底することによって、必要最低限のコンテンツでも購読する価値があると利用者に納得してもらえればいいからだ。直接の比較として良いか悪いかはわからないが、世には無数の有料メルマガでクズみたいな記事を配信している連中がいるのはご存じだろう。一か月で4回、つまり週に1回だけブログ記事に毛が生えたていどのメールをばら撒いて月額1,000円弱の価格設定で運営している場合が多い。150年以上も遡ってアーカイブ・データを自由に幾らでも読める、The New York Times の Basic プランの購読料金よりも高いのだ。新聞社が用意できる品質と精度と鮮度の記事なら、1日に3本の(質も量も十分な)記事を更新するていどなら月額で500円という設定でも可能だろう。有名人の有料メルマガなんて、しょせんスタッフやゴースト・ライター(クラウド・ワーカーのライターだと、誰の文章として配信されるかも知らされないで原稿を書かされる場合もある)が暇潰しに本人の口調で殴り書きしているようなものを毎月配信しているのだ。

もう、この話は10年以上も前から当サイトで何度か書いていることなのだが、新聞社にはオンラインの自称著名人なんてゴロツキどもに簡単に勝てるくらいの人員とリソースと設備があるのだ。なんでそれを有効に活用しないのか、僕にはまったく理解不能としか言いようがない。広告モデルを手放したくないといった理由で広告代理店に配慮しているなら、逆にメディアそのものを広報するという手法で代理店と連携すればいい。何もウェブ・ページの片隅に鼻くそみたいな GIF バナーを貼るかどうかなんてセコい話だけを電通とやってても仕方ないだろう。〈新聞という媒体そのものを広告する〉という観点で代理店と連携すればいいのである。

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