Scribble at 2023-05-01 16:05:14 Last modified: 2023-05-02 00:41:53

当サイトと PHILSCI.INFO と takayukikawamoto.com、それからプライベートで運営している WordPress のサイトを AWS へ移設すると書いたのだが、AWS でそれなりのデプロイメントを設定すると、あんまりコストが変わらない。それに、僕自身の工数も考えたら、まだヘテムルに任せても総合的なコストとしては妥当な金額の範囲だと思える。「工数」と言っても、初回のサーバ構築やアプリケーションのセットアップだけではなく、運用を始めた後のメンテナンスも含めて考えなくてはいけないからだ。これでもサーバ・エンジニアでもあるから、一ヵ月の工数で考えると何十万円かかるんだよという話になる。自分で建てたサーバなら「無料」とか無償奉仕というのは、やはり自分自身に対しても不愉快な発想だ。自分で運用する工数を計算すれば、ヘテムルのスタッフに任せて数千円なら安いと考えなくてはいけないだろう。よって、まだ受忍限度の範囲にあると思うので、移設は取り止める。

AWS は、FreeBSD や幾つかの開発言語の勉強とかテストに使う遊び場やサンド・ボックスとして、もっと安く気楽に、それこそ放っておいても構わないていどに使えるようにしておきたい。仕事ですら AWS の運用を何年も(もう2年だし、さきほどディレクターから本年度のキャンペーンでも使うと聞いた)続けているのだ。プライベートでまでサーバの運用を自分でやるのは、まだいい。

実際、ヘテムルにしても僕の利用しているサーバを社員1人が運用したりメンテナンスしているわけではない。よって、僕が一人で AWS のインスタンスを運用するコストに比べて安いのは当たり前である。ヘテムルのようなサービスであれば、使ってる機器にしても、ブレード・サーバと高密度のストレージが何台も組み合わせたクラスタ構成を何人かの社員で運用しているだろう。標準的な構成で言っても、ブレード用のストレージなんて1台で 1 PB くらいの容量はある。ヘテムルの利用者は 500 GB のストレージを使えるから、単純計算で言って1台のブレード用のストレージ機器に2,000人分のサーバ領域を確保できる。ペパボが提供しているレンタル・サーバ事業での契約者数は、ロイターなどの報道機関によると全体で約45万件とされているため、こういうブレード機器がラック1台に10機ていど載せられると考えて、20ラックくらいはあるということになる。ただまぁ、僕は IDC Frontier のデータ・センターにも足を運んでサーバの搬入とか徹夜でセット・アップしたこともあるから実感として分かるんだけど、20ラックなんて実はたいしたことないんだよね。標準的なラックの置き方をしてるデータ・センターで言えば、20ラックって2列分くらいなわけで、データ・センターにしてみれば「一部の顧客」に過ぎない規模だ。でも、それでも45万人分のウェブサーバを運用していて、僕のサイトがホストしてもらっているサーバも、その一つというわけである。

そのスケールだけで逆算したら、一人分のコストは大したことないかのように思えるかもしれないが、そういう機器というものはホット・スタンバイの代替機を何台も準備した上で運用されていたり(それらの代替え機も定期的に買い替えてメンテナンスする必要があるからだ)、前面に展開したバランサや UTM といったセキュリティ機器などのコストも含まれるわけなので、表面的に1台あたりのコストが安くつくからといって月額料金をもっと下げられるというわけでもない。それは、彼らに顧客として手加減しているわけではなく、同じくサーバ・エンジニアとして自分でもコストがかかるよなと思う実情や裏側の事情を知っているから言えるのだ。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook