Scribble at 2023-10-10 12:33:05 Last modified: 2023-10-10 12:37:39
ここでも書かれているように、不思議なことだが、最初に USB Type A のコネクタを挿し間違えて、「あれ、おかしいなぁ」と逆向きに挿すと、これまた違う。「なんだこれ?」と憤慨しつつ、最初の向きに戻して挿し直すと、なぜかコネクタが挿さる。こういう経験をしたことがないような人を、僕は「エンジニア」とは呼びたくないと言えるほどだ。
確かに、コネクタのインターフェイスをリバーシブルにするとコストが高くなるという理由はあろう。そして、それゆえに 50% の確率でユーザが挿し間違えることを許容させるような設計にしたということに、何らかの決断が必要だったことも分かる。しかし、実際には僕が述べたような(そして Twitter ではミームと化している)事例で分かるように、確率は 50% どころではなく、みんな本当に USB Type A のコネクタを憎んでいたと言ってもいい。これをリバーシブルにするために、パソコンの値段が数百円ほど上がったり、ケーブルの値段が数十円ほど上がるくらいなら大したことはないと誰もが言うだろう(実際、「アフリカで $100 パソコンを使っている貧しい家庭では、その合計数百円で家族が1週間ほど食べられる? 知ったことか。」というのが本音だろう)。いや、Lightning ケーブルのように、差込口の基盤だけ両面対応にしておいて、ケーブルのコネクタは片方だけ作れば良い。
ともあれ、こういう裏話は興味深いけれど、別に納得なんてしない。USB のインターフェイスが普及したのはコストが理由ではないと思うから、やはりこの設計は「クズ」だったと思う。ただ、抜き差しがしにくいという事実には、皮肉なことに別の効用があったのではないか。つまり、USB ケーブルの抜き差しそのものを頻繁にしたくないので、いったん接続したら放置できるような用途(たとえば外付けデバイスとか)に使えるなら許容したいという気分になったことだ。あるいは、どうしてもケーブルの抜き差しが起きるような用途のデバイス(ラップトップ・パソコン用のマウスなど)については、あの忌々しい USB ケーブルの抜き差しをするくらいなら無線のマウスを使おうという人が増えるきっかけになったかもしれない。
これはあまり知られていないが、そもそも USB というインターフェイスは抜き挿しには工業製品の耐久性として想定された寿命があって、おおよそ1,500回程度しか抜き挿しできないのが当たり前だとされている。つまり、ノート・パソコンに使う外付けの USB マウスを1日に外出先で3回ていどは抜いたり挿したりする営業マンのマウスだと、2年もたたずに使えなくなるというわけである。よって、もともと頻繁に抜き挿しするような用途で使うインターフェイスではないのだ。