Scribble at 2020-06-10 07:59:13 Last modified: unmodified
Twitter では5冊前後の reading list を紹介するブログ記事が幾つか投じられているけれど、もちろん最低限の素養としては勧められても、それらが最低限であると自覚するためには、やはり更に充実した reading list が実際にあると示す必要がある。はっきり言って、このような事案は本を1冊読んだくらいで読書感想文を書いて事足れりとするようなものではないのだから、公に対する自意識としてのアリバイ工作という意味だけではなく自己欺瞞を防ぐためにも、自分は僅かな一部を知ったり考えているに過ぎないという自覚をもつための、圧倒的な現実を自分に対して突きつける必要がある。僕が大学院生の頃に、よくサーベイ論文を集めて眺めていた(もちろん文献の集成だから眺めて活用するしかない)のも、その圧倒的な分量に敢えて対峙することで身の程を知るという自戒を促すのが目的だった。われわれは、徹底的に無知である。大学教員だろうと、いや自分の専門分野についてであろうとも、原則としてわれわれは《すべて》を知りうる能力も機会もない(或る時点で研究対象が宇宙から消失して復旧不能となった場合に、歴史的な経緯を発端から終端まで実際に誰が個人が経験したとしても、それだけで《すべて》を知っているとは言えない)。