Scribble at 2024-02-06 18:07:41 Last modified: 2024-02-10 11:49:37

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Willa Cather is one of the most important American novelists of the first half of the twentieth century. Seen as a regional writer for decades after her passing in 1947, critics have increasingly identified Cather as a canonical American writer, the peer of authors like Hemingway, Faulkner and Wharton.

Willa Cather

A Lost Lady (1923) の翻訳(『迷える夫人』)を読み終えてから、改めてウィラ・キャザーについて調べると、National Willa Cather Center なる施設がアメリカ中西部のネヴラスカ州は最南端のウェブスター郡にあるレド・クラウド(Red Cloud)という街にある。ウィラ・キャザーが出生地のヴァージニア州から9歳で移住して育ったところだ。そして、ここを街として整備したサイラス・ガーバー(Silas Garber, 1833–1905)というネヴラスカ州の知事だった人物が、A Lost Lady に登場するフォレスター大尉のモデルになった人物である。さて、この Center は整った組織でキャザーの事績が広められたり、関連する建設物が保存されたりしており、いまでも熱心に読書会が開催されたりレビューなどが発行されているようだ。それに比べて、いかに海外の作家だとは言え、日本でのウィラ・キャザーの扱いには極端な差がある。いまや、ウィラ・キャザーの翻訳書は殆どが絶版となっているし、古書店で手に入れることすら難しいので、やはりいまから読むなら図書館(しかも都道府県の中央図書館レベル)で借りる他にないだろう。ただし前回も書いたように、彼女の作品は public domain であるため、英語で読むならプロジェクト・グーテンベルクなどで幾らでも読める。

一読してみて、全体を自分で訳すほどの意欲はないものの、やはりこの作品はニールという若者を主人公にしている作品であるから、フォレスター夫人(の人物像)は、あくまでも彼の成長にとって重要な役割を果たした「強い関心事」の一つに過ぎないのであって、"A Lost Lady" という作品タイトルをフォレスター夫人が主人公であるかのように扱っている「迷える夫人」(厨川圭子)や「さまよう女」(林信行)という訳し方には強い違和感を覚える。仮に、これが誰かから見た夫人の姿だとしても、彼女の生涯の一部を見聞きしてきたニールであれ、あるいはフォレスター大尉であれ、それを「迷える」とか「さまよう」と表現することにも的外れな印象が拭えない。彼らはどちらも(フォレスター大尉はいつごろからか、そしてニールは終盤において)彼女が最初から何も変わらないままの女性であると理解したわけで、何の迷いやさまよいも彼女にはないと思った筈だ(逆に言えば、その当時の女性にとって、他に選択の余地は無かったとも言いうる)。となると、やはり "lost" を的確に訳そうとすれば、主人公のニール(ちなみに、ニールは語り手という意味での主人公ではない。ニールも俯瞰的な語り手によって描かれている一人であり、作者のキャザーもニールを「覗き穴にすぎない」とまで言っている)にとって、思い出の中で失われてしまった人物像でもあり、そして現実に亡くなってしまった人物でもある女性というニュアンスで表現しないといけないだろう。僕には、まだ的確な表現は見つからない。

なお、参考として YouTube で配信されていたレビューを2本ほど観たのだが、1本は作品の中で何度も出てくる「落ちる」というイメージが示唆しているものに焦点を当てていて興味深い。また、もう1本は標準的な感想だと思うが、「アメリカン・ドリーム」や「西部開拓時代」の終焉とか、そういう時代に豊かになった人々の没落というテーマを読み取っている。もちろん、ただの不倫小説とか少年の成長物語として読む人もいるだろう。なお、National Willa Cather Center が YouTube で公開している A Lost Lady の研究発表会みたいな動画も観たが、あれは退屈でどうしようもない。そもそも論文を読んでるだけなので、あればテキストでくれと思った。

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