Scribble at 2022-08-09 17:51:35 Last modified: 2022-08-09 17:52:46

何週間か前に始めた、逆ポーランド記法にかかわる調べものと論説の作成という課題は、その理由を明確に書いていなかった。それは数週間前に FORTH というプログラミング言語を勉強し始めて、逆ポーランド記法は FORTH の扱い方(つまりはコーディング)の基礎だからだ。

ところで、正直なことを言えば、演算子を最後に書くというスタイルは、僕には扱い辛い。他にもポーランド記法(演算子を先頭に書く)を採用した「関数型言語」として持て囃された〈だけ〉で、学術やビジネスで殆ど何の成果も出なかった、あれやこれやの言語についても言えることだが、これに慣れようとすると考え方を改めなくてはいけない。同じようなことは、数学なら対数や十分・必要条件、論理学なら実質含意について学んだ際にも感じた。これらの分かり難さが考え方の刷新で対応できると明快に議論してくれる数学者や論理学者(もちろん教師も含めて)は、結局のところいなかった。しかし、世の中には「数学的センス」だの「慣れ」だのというオカルト話ばかりが蔓延し、分からない人はそういう人種だの「文系」だのと何かの特別な欠陥を抱えた生まれ育ちでもあるかのように、クズみたいなレベルの理数系研究者や取り巻きの物理・数学オタクから罵られ、「文系にもわかるなんとか」みたいな本をご丁寧に福祉事業かなにかのように押し頂くほかにないという文化奴隷として生きるありさまである。

もちろん、数か月前にブルーバックスから出ている著作で書かれているように、それらは悪質な錯覚である。「僕は文系だから数学は分からない」とか「僕は理系だから数学が分かっている」とか「文系と理系の違いは何か」とか、その手の(馬鹿が好きな言い方を使うなら)「言説」は、すべて自意識や思い込みや自己欺瞞のカタログを作る素材でしかない。数学の点数が悪い人は分かるチャンスとしての勉強をしていないだけだったり(勉強しなければ分かるわけない)、分からない人の〈分からなさ〉というポイントが全く理解できない三流の教員や教科書に学んだせいだったりするのだ。つまり、本人のせいでもあるし、伝え方の未熟さでもあり、「右脳」だの「理系センス」だのというオカルト話など何の関係もない。そういう言葉で誤魔化す手合いが、実はいちばん何もわかっていないし、実際に対数や十分条件を的確に教えることもできないのである。それは、数学や物理の研究者の大半が教師としては度を越えた無能の集団であるという紛れもない事実が力強く立証している。

逆ポーランド記法の扱いにくさや分かりにくさは、恐らく僕がそう感じる脈絡では、僕自身にとっての分かり難さでありうる。分かり難さというのは一種類ではないことがあるからだ。もちろん、当人が本当の馬鹿である可能性もあるにはある(僕もその馬鹿の一人かもしれない)が、しかし馬鹿にも馬鹿なりの程度とか種類がある。そこでも一筋縄ではいかないからこそ、教育というのは本当に難しいのである。ともあれ、少なくとも僕にとっての難しさを自分なりに理解して明確にしない限りは、同じような事情で分かり難いと感じる人の役に立つ解説は書けない。それは、通俗本の書き手に限って、論理学が分かり難いと思う人はこういう人であろうと、たった一つのパターンや脈絡や誤解や動機だけで決めつけてものを説明しようとするのと同じだ。メンタル・モデルやペルソナの未熟な設定というのは、ビジネスにおいてもサービス設計を根本的に誤ったものとする重大な過ちである。マーケティング部署の人間なら、1年ほど大学で勉強しなおしを命じられるか、アメリカならその場でクビを切られてもおかしくない。

ということで、逆ポーランド記法について調べると、もちろんウカシェヴィチの事績を丁寧に遡る必要があり、彼は命題論理学(なんで「めいだいろんりがく」で MS-IME に変換させると常に「明大論理学」となるのだろう。明治大学に人類史を書き換えるゲーデル級の論理学者がいたとは思えないが)という脈絡で議論しているようだが、現在は「スタック指向」と呼ばれるプログラミング言語のコーディングの記法としても知られているし、コンパイルという処理の構文解析木を表現する(つまり出力形式のフォーマットとなっている)形式でも知られているし、幾つかの異なる脈絡で使われる。もちろん、特殊な電卓の入力方法でもある。あるいは、プログラミング言語で使われる一部の特殊な処理の一部だけに使われたりもする。その筆頭が正規表現のクリーネ・スター(或る文字の0以上の出現にマッチする「*」のこと)であることは、広く知られていよう。

こうしたことを丁寧に調べて、もちろん論説としても特別な条件を想定してのことだが、丁寧に解説してゆくことが目標である。その中で、僕自身としても逆ポーランド記法の有効性なり限界なりを更に正確に理解して使いたいと思う。

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