Scribble at 2023-09-07 09:31:59 Last modified: 2023-09-09 23:27:47

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知ってる人は知ってると思うが、Mail.com というフリーのメール・アカウントが使えるサービスがあって、なんだかんだと利用し始めてから20年以上が経過している。しかし、メインで使っているわけではないし、何かのサービスへ登録する「捨てアド」というわけでもないため、その流量は非常に少ない。最も多いのはスパムだというくらい、特に用途がないのだが、20年以上の運用が続いている。このサービスを運営する企業に興味はないのだけれど、ひとまずサービスとして20年以上も続けていることには、敬意を表しておきたい。

もちろん事業者の設立目的や事業の目標にもよるが、企業体や事業の一つの価値が事業継続性であることに異論を唱える人は少ないだろう。いくら「市場の新陳代謝」を尊ぶネオコンやリバタリアンであろうと、一週間前に上場した会社が翌週には解散するといったことを想定したり推奨しているわけでもないはずだ。高い事業評価額で身売りすることが「ゴール」であるような、どちらかと言えば実際に運用されているサービスよりも、その基礎になっている技術や知財が本質であるような企業はともかくとして、少なくとも一定の品質のサービスを提供することにこそ目標を置いている企業であれば、最低でも何度かの中・長期目標を株主に語りうるていどの事業継続性を維持したいと考えてもおかしくはない。

僕のごく主観的な感想として言えば、そこそこまともな年数の事業継続性というのは、だいたい新卒で入社した人材が定年退職するまで働けるていどの期間を指すと思う。もちろん、これは合理性や妥当性があるとは限らない終身雇用という発想を仮定した話であるから、歴史的に見ても、あるいは企業のライフ・サイクルという観点で言っても強い妥当性はないのかもしれないが、一定の説得力はあろうと思う。ただ、その終身雇用そのものがどんどん実質的な年数として長くなりつつあるから、事業継続性の基準も長くなる。僕らの父親の世代が新卒として就職した1960年代であれば、だいたい22歳で就職して55歳くらいが相場だったろう。1970年代に入ると、年金の支給開始年齢が60歳だったので、定年も60歳まで伸びたりするわけだが、長らく日本では55歳が定年だった(そういや、それなら俺は今年で定年だ!)。いまでは70歳という定年を設けている企業もあるようだから、主観的に「新卒入社から定年まで」と言っても40年を超える場合もある。これが進むと、そのうち半世紀という基準になるのだろうか。それはそれで、事業継続性という脈絡で言えばハードルの高い話になってくるのだろう。

ちなみに、この Mail.com では @mail.com の他にも別のホスト名を使ったメール・アカウントを持っているのだが、殆ど使ったことがない。しかし、そういう利用者がいても事業として継続することに、いくら「スケール・メリット」という概念を知っていても、やはり或る程度の感慨を覚える。

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