Scribble at 2025-11-24 08:23:42 Last modified: unmodified
Rust も、ちょうど日本では圏論が(出版社だけの)ブームになったのと同じくらいの時期に話題となってきて、同じく初心者向けの本が続々と出版されるようになった。そして、圏論と同じく一時的な出版ブームは過ぎ去り、あいも変わらずのことだが、初心者向けの本だけが大量に店頭へ並び、そこを超えた成果や論説が殆ど市場に出てこないという状況である。もちろん、Rust を送り出した Mozilla の上げた成果をはじめとして、Rust で実装された実績はあろう。だが、世の中で見かける成果の大半は、「Rust で~やってみた」式の、まるで「なろう系のラノベ」と大差ないとすら言える、IT ゼネコンで暇を潰している東大の修士ていどとか、あるいはオープン系開発ベンチャーの三流エンジニアによるお遊び日記が雑然と並ぶだけだ。
それでも、いまだに Linux のカーネルを書く次世代の言語という、既に誰も語ろうとしない希望は集めていたわけであって、殆ど意味も分からずに「Rust は速い」などと今だに語っている人々も多い。だが、上の記事で分かるように、ソフトウェア・エンジニアリングにおいて「速い」などという言葉を無造作に使うのは JavaScript のコーディングすら経験もなくて高校を出てきたような新入生だけである。開発の全体像が見えていなくても食べていける、Google のゴミみたいなエンジニア(それでも博士号は持っていたりする)ならともかく、プログラミング言語そのものを批評しようという場面では、やはり単純な実行速度という指標では何も語れないのが現実だ。FOR ループの所要時間なんていう話題は、われわれ IT アーキテクトが開発言語を語るときのステージにあっては、SE レベルの営業トークみたいな雑談にすぎない。
そもそも、Rust の学習効率が極端に悪いという評判が立ってから5年以上も経過しているのに、僕が見ている限りでは殆ど何の対策もない。それは、言語の仕様をどうこうするという根本的な話ではなく、コミュニティ全体で、末端のコーダはともかくプログラマの地位なり職能にある者が、メモリ管理をしっかりやりながらどうやって設計するかという話を、たとえば入門書の解説という状況においてすら改善している様子が見られないということである。それはどうしてなのか。
話は簡単だ。そういう解説を書いている連中の大半が、実は Rust で仕事をしていないからだ。そうした入門書向けの解説本を書いている人々というのは、オンライン・サービスの入門書を書いている自称アーリー・アダプタと同じで、素人に先んじてツールを使い込んで一定の情報や経験を得ているだけの凡人であり、別に解説書を書くエキスパートでもなければ開発のエキスパートでもない。そういう人々に、自分たちの解説を向上させたり改善するスキルがあるかと言えば、この国の教科書や大学テキストの執筆・編集という現状では相当に難しいと思う。なので、他の言語についても同じようなことだと思うが、ヘタレが解説を書いて素人が適度に(自力で実装できるレベルのスキルや知識を得ることなく)茶飲み話ていどの情報を得て終わるというのが現実だろう。そういう、ものを書いて出版する側の下方圧力を超えるような、すぐれた教科書を独立して作れるコミュニティや個人が少ないからには、どうしても最初から英語が読めて自力で Rust を使えるようになるような人々しか使えないし、得てしてそういう有能な人々に限って、日本の大多数のエンジニアなんて無視してアメリカで働いたり、あるいは日本でも海外のエンジニアとコラボレーションしており、日本の開発ベンチャーやプロジェクトなんて知ったことかという状況が多いと思う。