Scribble at 2024-10-07 19:31:33 Last modified: 2024-10-07 19:34:41
古い本だが、著作権法の概略や基本的な考え方を知るには適当だろうと考えて、それから500円ていどで古本が販売されていたという大きな理由もあって手に入れた。これから丁寧に読んでおく予定だ。
ただ、先日も書いたことだが、有斐閣は歴史もあって社会科学の著作物では大手の出版社ではあるけれど、DTP のデザイナーは場末の印刷屋並としか言いようがない。酷いな。
まず、前回も指摘した「見出しを意味もなくスラントにする愚行」を、この本でも繰り返している。たぶん社内で馬鹿が何年も前に決めた方針を DTP の部署で不文律のように維持してるのかもしれないが、こういう古参の大手企業だと若手(あるいは僕らのような有能なデザイナー)が疑問を挟むことは許されないのだろうね。そうやって、多くの業種で老舗の会社が少しずつ腐敗していったという歴史があるというのに。
それから、この『著作権法入門』に限って言えば、書体の選択もよくない。日本の印刷会社の仕事は、もちろん世界最高の品質だ。ということは、書体の選択を間違うと、正確に不適切さをしっかり維持して、文字が印刷されてしまう。よって、紙面の視認性が悪いのは、印刷会社の責任では殆どなく、DTP デザイナーの責任であると言っていいだろう。
そもそも、明朝体という書体は水平線が垂直線に比べて極端に細く設計されている。これは、素人によくある解説だと縦・横の太さに違いがあって視認性が高まるなどと書かれているが、実際には逆である。教科書、教材、高齢者用書籍、発達障害者用の書体などを見れば分かるように、アクセシビリティを理解している高度なプロの DTP デザイナーから言えば、明朝体は視認性が悪いというのが常識なのである。更に、本書のように垂直線すら細めになっていると、単に細くて読みづらい文字でしかない。
そして、明朝体が多くの印刷物で採用されたもう一つの事情は、ゴシック体や教科書体に比べてインク量を節約できるからである。しかし、それだけをもってして明朝体の採用を安易に推し進めると、こうして読みづらいだけの本ができあがり、書店で眺めたときにも悪い印象を与えることは想像に固くない。どれほど製造コストを節約できたとしても、売れない商品には何の価値もなく単なる不良在庫となるだけだ。もし市場で大きなシェアを占めているとしても、そういうことにあぐらをかいていて長く事業継続できた企業というのは、出版業界では多くない。出版社の経営陣であれば常識のはずだが、書籍の出版は1冊ごとが投資でありプロジェクトであるから、失敗すると大きな負債を抱える。書体の選択や見出しのデザインで業績が傾くとまで言うつもりはないが、やはり一ヶ月に何十冊と出版できる余力がある大手でも、舐めていると足元から瓦解するであろう。