Scribble at 2024-09-29 15:25:15 Last modified: 2024-09-29 15:28:22
大型書店のビジネス書がある棚で、特に新卒向けの本が多く集められている棚には、勉強法とか仕事のマナーとか自己啓発系の本だとかがたくさんある。そして、その中には仕事で使えるなどと豪語しているヒューリスティックスとかクリシンの本だとかに混じって、色々な「ツール」の本がある。でも、僕が少なくとも20年ほど企業の部長として色々と試したり他人のやっていることを眺めてきた範囲で言えば、それらの大半はタロット占いの本と同じ程度の効用しかないと思う。
たとえば、ブレインストーミング。たとえば、グラフィック・レコーディング。たとえば、マインド・マップ。こうした、誰がどういう理屈で考案したり実験したり評価されているのか、まるでわからない思いつきを、元 P&G だの元マッキンゼーだの元リクルートだのというだけの理由で、簡単に出版物として書かせてしまう馬鹿が都内にたくさんいる。もちろん、元出版社の編集者という経歴があった上でいうが、出版社の編集者なんて、その大半が修士号すらもっていない無知無教養な俗物だ。いわゆるヘイト本などを作っているようなチンピラどもだけが無能な編集者なのではなく、基本的に日本の出版・マスコミ業界で働いている人材の 99.99999% は、海外なら出版社や新聞社に入社すらできない学歴と素養しかもっていない素人集団である。
そういう連中が、適当に「印刷映えする面白そうなイラスト」みたいなものをこねくり回すだけで、なにやらビジネスに活かせるなどという与太話をでっち上げて、こういうツールの本を続々と書かせている。しかし、これは僕自身の経験から言うだけではあるが、そういうことをやっている会社員は殆どいないし、そういうことをやったからこそ何か成し遂げられたという上場企業の役員とかマネージャなんて殆どいないし、大きな業績を挙げた社員もいなければ、革命的なアイデアを思いついたディレクターもいない。ましてや自社を成功に導いたビジネス・モデルを、そんなイラストを描いて思いついたなんて経営者は、まず世界中でほとんどいないだろう。
そういうイラストやツールの類は、僕らのような科学哲学者に言わせれば、ものごとを学んだり正確に理解したり、あるいは端的に言ってものごとを推論したり分析するという知的作業の経験なり練習が不足しているという、凡庸な人々の多くが大学を出るまでにきちんと教育もされていない事実に寄生しているだけのまやかしであって、学校の予復習からノートの取り方やものの考え方や調べ方という、基本的なリテラシーを教育すれば不要のものである。日本は、教育水準の割に平均して多くの社会人が自律した調査や考察ができずに、下らない陰謀論や都市伝説やアビリーンのパラドクスのような牽制関係に感化されやすい。それは、何も左翼が言うような「自律した個人」というものがないからでも、右翼が言うような「伝統の尊重」が欠けているからでもなく、単純に教育制度が未熟で、東大出身でも最も質の悪い連中が掃き溜めのように文科省に集まって教育内容を決めているからだ。教育とは、大学や高校といった「箱」がたくさん増えたらいいものではなく、大学教員が増えたらそれでいいわけではなく、どう考えても一定の水準で質が担保されていなければ、そんな「民主化」は下方圧力にしかならず、左翼だろうと右翼だろうと無能が無能を再生産するだけになる。