Scribble at 2019-10-29 09:35:13 Last modified: 2022-09-29 14:33:27

添付画像

『化学用語小辞典』(ブルーバックス、B-552、講談社、1983)

現在は1993年に新版が出ているので「旧版」となるが、この辞典を高校生の頃に買って使っていた(と言うほどは開いていなかったが)。このところセルロースやプラスティックについて調べているので、何度か開く機会があったのだが、書誌情報を眺めていると、この本を編集した「ジョン・ディンティス」という人物の原語表記がどこにもない。新版はどうなっているか分からないが、それどころか他の著者もどこの大学や機関の人物なのか全く紹介されておらず、これでは学術的には「翻訳書」とは言えず、失礼ながら怪文書と同じレベルである。商品としての翻訳書には一定の品質基準というものがあり、学術的には原著の書誌情報を十分に書き記すことが望ましい。もちろん、原著に著者や編者の所属や地位が紹介されていなければ割愛するのも仕方ないが、編者の氏名の表記までどこにもないというのは、ブルーバックスの編集者のミスとしか言いようがない。

このような場合、pre-internet 時代なら図書館で Who's who や他の化学辞典を引いて調べる他に方法はないだろうが、いまでは「ameqlist 翻訳作品集成 (Japanese Translation List)」といったサイト(http://ameqlist.com/sfd/daintith.htm)で、"John Daintith" という候補が分かる。もちろん、これだけでは調査として不十分であり、更にこの候補を使って検索してみて、他にも色々な辞典を編纂している人物だということが分かるので、氏名はおおよそ確定する。ただ、検索しても John Daintith という人物がどういう人なのかは全く分からず、夥しい分量の書籍商品情報がヒットするだけだ。科学者なのか、それとも辞書編纂を専門にしているエキスパートなのかが分からない(物理や計算機科学の辞書まで編集しているので、何が専門なのかも不明だ)。そこで、辞典の発行元のページや Google Books のように正確かつ詳細な書誌情報や辞典の中身を確認できるリソースへアクセスしてみると、Oxford University Press の書誌情報には "John Daintith is an editor at Market House Books Ltd." とあるので、いわゆる「エディター」らしいことが分かるし、Google Books で front matter を確認すると、Credits に "John Daintith BSc, PhD" とあるため、自然科学系の学位を持っていることも確認できる。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


※ 以下の SNS 共有ボタンは JavaScript を使っておらず、ボタンを押すまでは SNS サイトと全く通信しません。

Twitter Facebook