Scribble at 2024-07-16 13:42:24 Last modified: unmodified
四年前に2,000円ほどで購入したのだが、もういまでは2倍の値段になっている。これは、いわゆる在庫処分で極端に安く買ったものではなかったから、実勢価格として本当に2倍になったのだ。いかに円安だとは言え、これはいかにも洋書を読んでいる者としては辛い。もちろん根拠もなく安易に「舶来品」を信奉しているわけではないが(洋書を読めるからこそ、海外でも大半は凡人だと分かるのだ)、歩留まりなんて大して変わらないのだから、やはり数が多ければ優れた仕事が比例して多くなるのは当然だ。なにもアメリカ人やインド人や中国人が無条件にこの国の人々よりも優れているわけではない。
本書は、もともと日本で盛んに記事や書籍として書かれていた「DX」の胡散臭い解説を補正するために購入したものだった。実際、本書の方が正しいなどと言うつもりはないが、少なくとも日経やプレジデントなどで経済評論家や経営評論家のような人たちが喚いている類のものは、殆どが本書で解説している DX とは似て非なるものだと分かる。つまり、単にオンライン・サービスを使うとか、果てはただの「OA化」みたいなものを「DX」と叫び、予算を確保して国内の事務機屋とか IT ゼネコンに膨大な金額の発注をかけているのだ(国内の集計でも莫大だが、恐らく個別の大企業でも相当な金額を投じているだろう)。弊社は、もちろん事実上の「社内哲学者」である、いやしかも「社内科学哲学者」であるばかりか distinguished and leading developer でもある僕がいる限り、そのような愚行は避けなくてはならない。そんなわけで、社内の研修でも本書を活用してきたわけである。ただ、厳密なことを大量に解説しても、「ITパスポート試験」にすら受かるかどうかも怪しい、ネット・ベンチャーの社員には難しい。よって過去には簡単な動画で解説したていどだ。
だが、そろそろ生成 AI についてのガイドラインが必要だと感じているので、本書の後半を利用して、正式な利用ガイドラインを策定したい。正直、生成 AI についての全般的な説明は、本書と他の何冊かを利用すれば十分だ。また、生成 AI を利用する際のリスクについても、それらの多くは既に書籍でも出ているし、オンラインで検索しても弁護士などが解説している。そして、そもそも生成 AI に質問しても、かなりまとまった回答を出してくれる。だが、生成 AI の利用ガイドラインを生成 AI に出力させたままでは不十分である。それがなぜなのかは、やはり AI ならぬ人物が解説しなくてはならないだろう。それは、何も僕らが生成 AI を凌駕する知性をもっているからではなく(そもそも知性とは何であるか分かっていないのに、凌駕するもヘチマもない)、生成 AI が原理的にウェブ・コンテンツの集積であり、かつ検索データの集積という明確な限界をもっているからなのだ。つまり、それらを組み合わせて「意味論的にいい感じ(語尾上げ)」に作文したテキストには、統計学的な「よさげ」という基準以外の妥当性がない。そんなものに人の社会の判断を任せてはいけないのである。