Scribble at 2025-09-07 14:49:02 Last modified: 2025-09-07 18:23:39

個人情報保護法(法制)やプライバシーマークに関連する書籍というのは、大別すると三つくらいに分類できる。

まず第一に、法令や産業規格の逐条解説とかガイドラインだ。もちろん、JIS Q 15001 という産業規格の規格書そのものも販売されているのだから、この中に入る。大部のコンメンタールや JIPDEC の規格解説など優れた著作は多いが、重要なのは法の理論としても、それから社会思想としても、あるいは企業の実務としても、現行の法令や規格だけにしたがっていれば十分というわけではないことだ。特に、法令や産業規格の内容は技術的・実務的な詳細が敢えて規定されていないため、事業者によって実装が異なり、そしてたいていは未熟で杜撰な実態と言って良い。法令や規格を暗記しようと、それからプライバシーマークの使用許諾を受けようと、そういうことは読み物の中に書かれた理屈だけでは、決して向上させられないということをわきまえる必要がある。

そして第二に、弁護士やコンサルなどが書く通俗的な解説書の類だ。これらの中には、もちろん岡村久道氏のような信頼できる優れた専門家が書いている『個人情報保護法の基礎知識』(日経文庫)のように、すぐれた入門書もあるにはあるが、通俗書の大半は、単に弁護士だから法令はなんでも解説できるという思い上がった馬鹿の本だとか、あるいは物書きとしても実務家としても未熟な外資系コンサルや上場企業の法務部長とかが殴り書きしたような本も多く、相変わらず自称「ITコンサル」や自称「専門家」あるいは都内のベンチャーの CTO やセキュリティ担当を名乗る小僧とかが書いた、正直なところ僕がここで書いている落書きの内容にすら及ばない水準の愚劣な紙屑を商品にしている詐欺師同然の者も多い。はっきり言ってこれらの中からまともな本を選び出せるくらいなら、あなたは皮肉にもそれらの通俗本を読む必要がない専門家であると言っていいほどだ。

最後に第三の分類として、資格関連の本だとか、あるいは海外の動向や個々の事案なり事件の分析、それから Cookie とか認証のような関連技術や、個人情報保護方針という文書だけに着目した本である。プライバシーにかかわる理論書や社会思想の本も含めて良い。色々な観点の色々な内容の本が含まれるため、まさしく玉石混交だ。

ただ、一つだけはっきりしているのは、個人情報保護に関連して資格を取得することには、殆ど意味がないということである。いまや、「個人情報保護士」だとか、あるいは色々な団体や事業者が立ち上げて実施している資格試験があるようだが、プライバシーマーク、つまりは JIS Q 15001 の適用範囲が原則として事業者全体であり、事業者の従業員や役員など構成員の全てが PMS というマネジメントシステムの適用範囲でなくてはいけないのはなぜかを考えたら、社内の一部の人員だけが資格をもっていても意味がないことは即座に分かるはずである。いや、仮に社員全員がそうした資格を取得したとしても、そんなペーパー・テストを社員が個別バラバラに受けて合格したというだけで、社内体制がしっかりと構築・整備されている保証になどならないのである。重要なのは会社として情報をどのように取得したり利用したり保護しているかであって、個々の従業員が法令や規格をどれほど理解しているかどうかの問題ではないのだ。更に言えば、実際に PMS として社内を統制しているのは各事業者の内部規程なのであるから、ペーパー・テストで合格した者が社内のルールを実際に守っているとは限らないという、実はよくあることが、資格の有無だけではわからないわけである。そういう意味では、寧ろマネジメントのリスクが増えているとすら言えるわけで、まさしく個人だけで取得する資格というのは組織にとってはモラル・ハザードが起きやすいのである。

よって、20年の実績や知識や技術力をもつ僕から言えば、資格関連の本は読む必要がないのであり、組織が個人データを適正に保護していることを対外的に訴えたいなら、社員に資格試験を受けさせるなどというイージーな手段をとるのではなく、やはり産業規格ていどはクリアして、プライバシーマークの使用許諾を認定される体制を整備することが望ましいわけである。正直、プライバシーマークの認定事業者ですら、実務を担っている人々の多くはコンサルに丸投げのペーパー・ドライバーが多いわけで、僕らのような実務家から見れば、僕ら自身が相手方に訪問して監査でもしない限り、プライバシーマークの認定事業者だとは言ってもぜんぜん信用できない。マネジメントシステムが全く機能していなかった、ベネッセや大日本印刷がいい例だ。

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