Scribble at 2023-09-10 21:08:51 Last modified: 2023-09-11 09:23:47

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情報圧縮は、情報の冗長性を削り取ることです。正しく送るためにあえて冗長な情報を付け加えるのが、誤り訂正のためのデータです。このように、情報の冗長性という視点で情報技術とその基礎になる情報科学をやさしく解説します。

青木直史『冗長性から見た情報技術―やさしく理解する原理と仕組み』(講談社ブルーバックス、2011)

画像や音声の圧縮やバックアップ、あるいは通信の暗号化といった、パソコンを使っていてお目にかかる色々な手法を紹介しつつ、情報の冗長性を除外することと、逆に情報の冗長性を追加することとを、どちらも目的に応じて必要な技術として丁寧に紹介している。「ITパスポート」レベルの話だが、このレベルの素養をもつべき業務に携わる方には、一読をお勧めしたい。

これまでの読書経験から言うと、講談社ブルーバックスの茶帯、つまり工学系のタイトルは、なかなか歩留まり率が高い。それに比べて、物理、数学、化学、そして医学系にはどうしようもないもの、つまり想定する読者の背景知識が不明なものだとか(一般向けなのに大学院生レベルの知識がないと、何を言っているのか理解できないような本がある)、一般向けを意識しすぎて図解やグラフや概念の定義があまりにも雑で、学んだ後に却って誤解や過大評価ゆえに混乱すると思われるような解説をしているタイトルもある。それに比べたら、やはり地に足の付いた分野であるからか、工学系には良書が多いという印象がある。

ただし、本書もアマゾンで見る限りはどうやら品切れか絶版のようだ(古書としてしか手に入らない)。電子版があろうとなかろうと、わずか12年前の出版物なのに在庫がないという講談社の姿勢には、疑問を感じる。こういう出版社に古書店業を非難する資格はないと思うね。

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