Scribble at 2022-02-05 14:09:32 Last modified: unmodified

randomness については、情報セキュリティの実務家として PRG (pseudorandom generator) などの実装に興味があるというだけではなく、およそ「規則性」という概念にとってどういう関わりがあるのかという科学哲学の観点からも興味がある。もともと確率については probabilistic causation の研究をやっていたことでもあり関心はあったのだが、予測の立ち難さという点では、確率に比べてランダム性は予測不可能であることが論理的な条件の一つでもあろうから、更に理解が難しい。

単純に表面的な複雑さとか分からなさというだけでは、randomness を定義するには不十分である。たとえば、

82842712474619009760337744841939615713934375075389...

という数字の並びは一見するとデタラメに〈見える〉し、実際に終わりのない無限小数の各桁の並びである。この数の10,000桁目から10,010桁目までの数を抜き出せと言われても、普通はできない話にも思える。しかし、これが √8 の小数点以下の数字だと言われたら、そこで話は殆ど終わってしまう。「2乗すれば8になる数」という規則性が分かってしまうからだ。√8 = 2*√2 であるから、√2 を、

1.41421356237309504880168872420969807856967187537694807317667973799...

として計算すれば上記の数が √8 の一部として出てくる。「出てくる」ということは予測可能であって、これでは randomness とは言えない。

これはヒラリー・プトナムがかつて議論したという事例と同じで、一見すると規則性がないグラフであっても、デタラメに〈見える〉範囲のグラフが規則的に繰り返されるパターンがあるのかもしれない。もしそうであれば、限られた範囲では規則性がないように見えても、更に巨視的なスケールでは予測できるものだと言えるわけで、しょせん人が見た限りでのデタラメさや規則性というだけでは足りないということでもある。「1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, ...」という数列があったとしても、これがこのような数列であるという前提は、もしかすると現実の世界では前提というよりも「仮定」である可能性もあろう。つまり、これまではそうだったにすぎないということだ。これが、第1042桁目から「397, 1, 2209856, ...」などとならないという保証はないからである。実際、コペルニクスの原理(宇宙の斉一性原理)として知られている原理も仮説にすぎないと言えるわけなので、われわれが数学という形式的な手段や概念で定式化したことが現実の事象について当てはまる保証などもともとない。たとえば、この宇宙で現実にありうるどんな物理量であっても、それを簡単に凌駕する数を数学は扱える。

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